渡辺鉱

渡辺鉱：北海道で発見された希少な鉱物

1993年、北海道の手稲鉱山で発見された渡辺鉱(Watanabeite)は、日本産の新鉱物として鉱物学に新たな一ページを刻みました。発見者は、当時東京大学総合研究資料館に所属していた清水正明氏（富山大学鉱床学者）らの研究グループです。

その化学組成式はCu₄(As,Sb)₂S₅で、結晶系は斜方晶系に属します。見た目や構造が安四面銅鉱と酷似しているため、肉眼での識別は非常に困難で、電子顕微鏡による分析が必要となります。

この鉱物は、日本の鉱床学・鉱物学に多大な貢献を果たした東京大学の渡辺武男氏の功績を称えて命名されました。清水氏は、渡辺鉱の発見という偉業により、櫻井賞第31号を受賞しています。

最新の研究成果：結晶構造の解明

近年、2024年に渡辺鉱の結晶構造が解明されました。その結果、四面銅鉱と共通する構造部分と、それと異なる別の構造部分が1:1の比率で結合していることが明らかになりました。この発見は、渡辺鉱の結晶構造に関する理解を大きく深めるものです。

また、これまでの文献において「渡辺鉱のアンチモン置換体」として言及されてきた鉱物は、ファマチ鉱(Famatinite: Cu₃SbS₄)である可能性が高いと推測されています。この推測が今後の研究によって裏付けられれば、渡辺鉱とファマチ鉱の関連性についてもより明確な理解が得られると考えられます。

渡辺鉱の発見と今後の研究

渡辺鉱の発見は、日本の鉱物学研究における重要な成果の一つです。希少な鉱物であるため、その産出量は限られていますが、その特異な結晶構造や、安四面銅鉱との類似性など、研究対象として非常に興味深い鉱物です。

今後の研究においては、渡辺鉱の生成条件や地質学的背景、そしてファマチ鉱との関連性など、更なる解明が期待されます。これらの研究成果は、鉱物学のみならず、地球科学全般への理解を深める上で重要な役割を果たすでしょう。

関連情報

関連鉱物: 安四面銅鉱、ファマチ鉱
発見地: 北海道手稲鉱山
命名由来: 渡辺武男氏 (東京大学)
参考文献: 松原聰「新鉱物発見物語」 棚の中に眠っていた新鉱物－渡辺鉱、2006年、岩波書店。ISBN 4-00-007455-5

渡辺鉱に関する研究は現在も続けられており、新たな知見が得られる可能性は高く、この希少な鉱物が秘めている謎の解明に期待がかかります。

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