渡邊裕子

渡邊 裕子（わたなべ ゆうこ）は、1987年11月3日生まれの日本の元陸上競技選手である。専門は長距離走、特にマラソンとハーフマラソンで、現役時代はエディオンに所属した。広島県賀茂郡黒瀬町（現在の東広島市）に生まれ育ち、東広島市立黒瀬中学校、広島県立西条農業高等学校を卒業。

中学校に入学した1年生から陸上競技を始めたが、高校時代には全国的に特筆するような成績はなかった。しかし、2006年にエディオンに入社して実業団選手となって以降、地道な努力により着実に実力を伸ばしていった。

フルマラソンに初めて挑んだのは、2012年3月11日に開催された名古屋ウィメンズマラソンである。この大会はロンドンオリンピックの選考レースでもあった。結果は13位であったものの、2時間29分台で完走し、初マラソンながら新人賞を獲得した。

翌2013年1月27日の大阪国際女子マラソンでは、自身のマラソン自己記録を3分以上も更新する2時間25分台の記録を樹立し、日本人選手の中で2番目となる2位でゴールした。この好走により、同年8月に開催される世界陸上モスクワ大会の有力な代表候補の一人となった。しかし、日本陸連が定めた女子マラソン派遣設定記録（2時間23分59秒）には約2分及ばず、また、この大会で優勝者（当初2着から繰り上げ）となった福士加代子選手からも1分35秒差をつけられていたことが選考上の課題となった。さらに、当時の日本陸連は女子マラソンの代表枠5つを3つに削減する方針を採っていたことも影響し、結局、初の国際大会日本代表には選出されなかった。同じく大阪国際女子マラソンで日本人最上位に入りながらも代表入りを逃した那須川瑞穂選手も、2時間26分台という記録が考慮されなかったとされる。

代表選出を逃したものの、渡邊は競技への意欲を失わなかった。2013年8月25日の北海道マラソン・女子の部に出場し、自身にとって悲願だったフルマラソンでの初優勝を果たした。

その後も国際大会代表を目指し続けたが、2014年1月26日の大阪国際女子マラソン、そして翌2015年1月25日の同大会では、共に優勝や日本人首位といった代表選考で重要視される成績を収めることができず、2014年の仁川アジア競技大会や2015年の世界陸上北京大会のマラソン代表入りは叶わなかった。

マラソン以外の実績として、2015年5月3日に開催されたWINGS FOR LIFE WORLD RUNに出場し、56kmの距離を走り抜いて女子の世界チャンピオンに輝くというユニークなタイトルを獲得した。

2016年1月31日には、リオデジャネイロオリンピック・女子マラソンの日本代表選考を兼ねた大阪国際女子マラソンに4年連続でエントリーした。序盤から先頭を快走する福士加代子選手らには無理についていかず、自身のペースを維持したが、自己ベストからは程遠い2時間37分台という結果に終わり、15位にとどまった。リオ五輪代表入りに向けては、この大会からわずか7週間後に開催された国内最終選考会である名古屋ウィメンズマラソンにも、一般参加選手として再挑戦した。レース前半は先頭集団に食らいついたが、徐々にペースを落とし、結果は大阪国際と同じ2時間37分台、順位は自己最低となる34位に終わった。

2017年3月12日にも世界陸上ロンドン大会選考会である名古屋ウィメンズマラソンに出場したが、2時間42分台で29位という結果に終わり、このレースが彼女にとって現役最後のフルマラソンとなった。

フルマラソンからは距離を置いた後も競技を続け、2018年5月13日の仙台国際ハーフマラソンでは、1時間13分51秒で7位に入った。そして、2018年11月25日に開催されたクイーンズ駅伝（第38回全日本実業団対抗女子駅伝競走大会）にエディオンチームのアンカーとして出場し、22分37秒で区間16位（チームは総合16位）となった。これが、渡邊裕子選手の現役最後の公式レースとなった。

レースを終えた後、2018年12月末日をもってエディオン女子陸上部を退部し、約13年間にわたる競技生活からの引退を表明した。

自己記録

• - 5000m - 16分07秒12（2011年4月29日、織田幹雄記念国際陸上競技大会）
• - 10000m - 32分27秒89（2011年6月27日、ホクレン・ディスタンスチャレンジ）
• - ハーフマラソン - 1時間10分06秒（2012年12月23日、山陽女子ロードレース大会）
• - マラソン - 2時間25分56秒（2013年1月27日、大阪国際女子マラソン大会）

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