渡部英美

渡部英美（わたなべ ひでみ、1955年9月12日生まれ）氏は、日本の放送界において長年にわたり重要な役割を担ってきた人物です。元NHKエグゼクティブアナウンサーとして活躍し、同協会のアナウンス部門のトップであるアナウンス室長も歴任しました。現在は、教育者として大学で教鞭をとっています。彼のキャリアは、多岐にわたる番組制作、出演、そして組織運営に及びます。

若年期からNHKへ

東京都出身。若年期より放送の世界に関心を持ち、東京学芸大学附属大泉小学校、東京都立井草高等学校で学びました。特に中学・高校時代には放送部に所属し、メディアへの興味を深めます。青山学院大学文学部日本文学科に進学し、江戸文学・文化を専攻しました。大学卒業後の1979年、日本放送協会（NHK）に入局します。

各地での経験

NHK入局後、渡部氏は全国各地の放送局で経験を積みました。富山局では「FMリクエストアワー」などの番組を担当し、地域に密着した放送に携わります。次に赴任した帯広局では、十勝地方の情報を伝える「とかちフレッシュガイド」や「きょうの北海道」、音楽番組の「帯広FMリクエストアワー」などを担当。特に単発特番「おびひろスペシャル」では、緑が丘公園の400メートルベンチを自ら走り抜けるユニークなリポートを行い、「俊足、渡部」と称するなど、地域イベントの取材を通じて親しみやすい一面も見せました。また、地域の魅力を探る紀行番組「北海道中ひざくりげ」では、十勝エリアの旅人として出演し、その土地の人々や文化を温かく伝えました。

東京での活躍と制作活動

その後、東京アナウンス室に異動し、渡部氏のキャリアは一層多様化します。単にアナウンサーとしてだけでなく、番組ディレクターとしてもその才能を発揮しました。特に、社会問題や時代背景を深く掘り下げるNHKの看板ドキュメンタリー番組「NHK特集」や「NHKスペシャル」において、「土地は誰のものか」「新日本人の条件」「こうして魚になりました」「雲仙普賢岳」といった数々の力作の制作に携わりました。これらの番組は、多角的な視点と綿密な取材に基づき、視聴者に強いインパクトを与えました。

また、キャスターとしても活躍し、経済の動向を分かりやすく解説する「なるほど経済」や、世界各地の様子を伝える「世界体感生中継」などでメインを務めました。教育番組「スクール五輪の書」では、「国際の巻 ワールドドキュメント」のコメンテーターとして、世界の文化や社会情勢に関する洞察を提供。視聴者参加型の情報バラエティ「スタジオパークからこんにちは」では、番組初期に「アナウンサーにQ」コーナーの司会を担当し、自らの経験を交えながら視聴者の質問に答えました。「おーい、ニッポン」ではリポーターとして全国各地を訪れ、地域の特色を伝え、「難問解決!ご近所の底力」では特番のナレーションを務めるなど、幅広いジャンルの番組でその声と存在感を示しました。

その後のキャリアと現在

東京での多様な活動の後、大阪局に異動し、「関西ホットライン」などの地域番組に関わります。また、「ラジオ文芸館」では構成を担当するなど、番組制作の裏方としても才能を発揮しました。

NHKにおけるキャリアの集大成として、放送総局の第28代アナウンス室長という要職を務めました。これは、NHKのアナウンス部門を統括し、全局のアナウンサーの指導育成や番組出演に関する責任を負う重要な役職です。長年の現場経験と制作知識を活かし、組織運営においても貢献しました。

NHKを退職後、渡部氏は教育の道に進み、現在は跡見学園女子大学文学部コミュニケーション文化学科の教授として教鞭をとっています。専門は日本語コミュニケーション文化論で、自身の豊富なメディア経験を基に、次世代のコミュニケーション研究者やメディア関係者の育成に力を注いでいます。アナウンサー、ディレクター、組織の要職、そして大学教授と、渡部英美氏の歩みは、日本の放送メディアの発展と共に、多様な分野での貢献を示しています。

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