温 (国)

温（おん）、または蘇（そ）は、古代中国の周王朝時代に存在した国家であり、その領域は現在の河南省焦作市温県に相当します。この国は、古代史の中で重要な役割を果たしたとされています。

起源と始祖

温の歴史は、伝説的な人物である蘇忿生（そふんせい）を始祖としますが、それ以前には昆吾（こんご）の子孫がこの地に封じられていたという説も存在します。蘇忿生は、殷王朝末期の悪女として知られる妲己（だっき）の父親として伝えられていますが、これはあくまで伝承に近いとされています。殷周革命の後、蘇忿生は周の武王に降伏し、司寇（しこう）という重要な役職に就任しました。

周王朝との関係

蘇忿生の末裔は、周王朝において五大夫（ごたいふ）の一人として名を連ねるほどの地位を得ました。しかし、その権力は長くは続きませんでした。彼らは北方遊牧民族の狄（てき）と内通し、反乱を企てましたが、後に狄との関係が悪化し、衛（えい）という国に逃亡しました。さらに、恵王（けいおう）の時代には、温（蘇）子（おんし、またはそし）が同じく大夫であった蔿国（いこく）らと共謀し、姫頽（きたい）を担ぎ出して反乱を起こしました（子頽の乱）。この事件は、周王朝の権威を揺るがす一因となりました。

虢の滅亡と温

周王朝の藩屏国であった虢（かく）が紀元前655年に晋（しん）によって滅ぼされた際、虢公丑（かくこうちゅう）は一部の勢力を率いて、岳父である温（蘇）子を頼り、この地に逃れてきたという記録が残っています。これは、温が当時、ある程度の勢力を持っていたことを示唆しています。

滅亡とその後

紀元前650年、温（蘇）は狄によって滅ぼされました。この滅亡により、温の歴史は幕を閉じました。しかし、その末裔は遠祖である蘇忿生が司寇の地位にあったことにちなみ、寇氏（こうし）と名乗るようになりました。この寇氏は、後の中国史において重要な役割を果たすことになります。

温は、その短い歴史の中で、周王朝との密接な関係、反乱、そして滅亡という激動の時代を経験しました。その歴史は、古代中国の政治情勢や社会構造を理解する上で重要な手がかりとなります。

もう一度検索