温泉マーク

温泉マーク：歴史、デザイン、そして現代の多様な活用例

温泉マーク（♨）は、日本において温泉や鉱泉の位置を示す地図記号として広く知られています。しかし、その歴史やデザイン、現代における活用例まで含めると、意外なほど奥深い世界が広がっています。この記事では、温泉マークに関する様々な側面を詳しく解説します。

起源と歴史

温泉マークの起源は諸説ありますが、最も有力な説としては、1884年（明治17年）の『假製2万分1地形圖圖式』において、地図記号として初めて登場したというものです。それ以前にも、1884年（明治12年）に内務省地理局測量課で制定された点図に温泉を示すマークが存在したとする説もあります。

その後、地形図の記号として継続的に使用されてきましたが、名称は時代によって変化しました。「温泉」、「礦泉」、「温（鉱）泉」、「温泉・鉱泉」など、時代背景を反映した変化が見られます。

デザインの変遷

温泉マークは、湯壺を表す円と、そこから立ち昇る湯気を表す3本の線で構成されています。湯壺の形状はほぼ変わっていませんが、湯気の形状は時代によって変化しています。明治28年式から大正6年式までは曲線、大正6年式から平成14年式までは直線、そして平成14年式以降は再び曲線に戻りました。曲線に戻されたのは、温泉の湯気の実態をより反映するため、そしてデジタル化による作図の容易化が理由です。この変更過程では、湯気の向きに一時的な混乱も生じました。

性的な意味合いとイメージの変遷

昭和25年頃からは、いわゆる「連れ込み旅館」が温泉マークを宣伝に利用したことで、温泉マークは性的な意味合いを持つようになりました。「さかさくらげ」という隠語も生まれました。しかし、温泉旅館組合の間でイメージの悪化が問題となり、昭和30年には連れ込み旅館での使用が禁止されました。1970年代以降は、ラブホテルが主流となり、「さかさくらげ」は死語となりました。

現代の活用例

性的な意味合いを失った温泉マークは、現在では浴場を示すマークとして定着しています。日本だけでなく、台湾や韓国などでも使用されており、特に韓国では旅館の記号として広く用いられています。

さらに、温泉マークは様々なデザインにも取り入れられています。例えば、熱海市の市章や、YMOのアルバム『BGM』のアートワーク、企業ロゴ、アニメ作品など、多様な場面で温泉マークを見ることができます。

地形図における表示

地形図における温泉マークは、温泉法に基づく温泉および鉱泉のうち、主要なものに表示されます。記号の寸法、線幅、色なども規定されています。泉源と浴場が離れている場合は、浴場にも表示される場合があります。

温泉マークの起源に関する諸説

温泉マークの起源については、磯部温泉発祥説、ドイツ起源説、別府温泉起源説など、複数の説があります。磯部温泉説では、1661年（万治4年）の文書に描かれた記号が、現在の温泉マークの原型であると主張されています。一方、ドイツ起源説は、19世紀のドイツの地図に類似の記号が存在したことに基づいています。別府温泉説は、油屋熊八が別府温泉の宣伝に温泉マークを多用したという説ですが、地形図への採用時期を考慮すると、これは成り立ちません。

国際標準化機構（ISO）との違い

ISOが定める温泉を示すピクトグラムは、日本の温泉マークとはデザインが異なります。2016年には、訪日外国人増加への対応として日本の温泉マークの見直しも検討されましたが、結局は従来のマークの併用が決定しました。

まとめ

温泉マークは、地図記号としての機能に加え、文化的・歴史的背景、そして現代の多様な活用例を通して、日本社会に深く根付いたシンボルと言えるでしょう。その歴史とデザインの変遷、そして現代における役割を理解することで、温泉マークに対する新たな視点が得られるはずです。

もう一度検索