湯本武比古

湯本武比古：日本の近代教育に貢献した教育者

湯本武比古（ゆもと たけひこ、1856年（安政2年）1月8日 - 1925年（大正14年）9月27日）は、明治から大正時代にかけて活躍した日本の教育者です。長野県中野市出身で、東京師範学校を卒業後、文部省や皇室の教育機関で重要な役割を担いました。その生涯は、日本の近代教育の形成と発展に大きく貢献した証と言えるでしょう。

教育者としての歩み：

湯本武比古は、長野県師範学校飯山支校を経て、東京師範学校中学師範科を卒業します。卒業後、文部省編輯局に入省し、『読書入門』の編集に携わりました。その後、東宮明宮（後の大正天皇）の教育掛を拝命し、学習院教授として大正天皇の教育にも関与しました。この経験は、湯本武比古の教育思想に大きな影響を与えたと考えられます。

さらに、ドイツに留学し、皇族教育の研究を行いました。帰国後は、高等師範学校嘱託教授として教育学を講義し、教育界への貢献を続けました。教育雑誌『教育時論』の主幹を務めた際には、「開発教授」「国民教育費の国庫自治体負担」「実業教育の奨励と科学思想の養成」「皇国民的徳義感情の養成」「小学校教員の地位向上」などを提唱。その教育思想は、日本の教育制度改革に大きな影響を与えています。

教育理念と実践：

湯本の教育思想の中心には、ヘルバルト教育学と道徳教育がありました。彼はヘルバルト教育学の普及に尽力し、特に徳性の涵養を重視した教育を展開しました。この思想は、彼が設立や運営に関わった数々の教育機関にも反映されています。私立京北中学校（後の京北実業学校）の設立や、女子東京美術学校校長、私立精華学校の設立など、教育機関の設立や運営にも積極的に関わりました。また、全国私立中等学校併合委員長や私立中等学校協会理事長を務めるなど、教育行政にも貢献しました。

晩年と功績：

晩年は、東洋大学の事務にも携わりました。1925年、脳溢血のため69歳で死去。その功績は、数々の著作にも表れています。『読書入門』をはじめ、『新編教育学』『新編教授学』など、多くの教育関連書籍を執筆・編纂しました。また、『教育時論』を通じて、日本の教育政策の課題を提起し、その改革に貢献しました。

湯本武比古の教育思想は、現代の教育にも通じるものがあります。 特に、道徳教育の重要性や、個人の能力を伸ばすための教育のあり方などは、現代社会においても重要な課題であり続けています。湯本武比古は、日本の近代教育史において重要な役割を果たした人物であり、その生涯と業績は、後世への大きな遺産となっています。

主な著書・編書：

『読書入門』
『巡覧 特殊教授法』
『新編 応用心理学』
『新編 教育学』
『新編 教授学』
『学童百話』
『心理学新論』
『日本倫理史稿』
『日本倫理史要』
『教育学教科書』
『中等修身書』
『憲法発布勅語略解』
『新編 倫理学要義』
『今上陛下御幼時の御教育』など多数。

栄典：

従七位
勲四等瑞宝章
勲三等瑞宝章
従五位

湯本武比古の生涯と業績は、日本の近代教育史を理解する上で欠かせないものです。彼の教育思想や活動は、現代の教育にも多くの示唆を与え続けています。

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