湯村光

湯村光：自然と対話する彫刻家

1948年、鳥取県生まれの彫刻家、湯村光。東京芸術大学彫刻科卒業後、フランス国立パリ美術学校に留学するなど、国内外で研鑽を積みました。黒御影石を主に用いた、静謐な印象を与える彫刻作品を数多く発表し、高い評価を得ています。

作風：自然石との対話

湯村氏の作品は、黒御影石の持つ力強さと、自然の繊細さを巧みに融合させています。研磨された滑らかな表面と、あえて残された荒々しい破断面が、一つの作品の中で共存。この対比が、見る者に静寂と深遠な印象を与えます。素材である自然石との対話を重視する作風は、彼の作品世界を特徴づける重要な要素です。単なる石の彫刻ではなく、自然と人間の関わり、時間の流れ、そして存在の根源といった、より深いテーマを想起させる力があります。

代表作：各地に息づく彫刻

湯村氏の作品は、美術館や公共施設だけでなく、公園や街路など、人々の生活空間にも設置され、地域に溶け込みながら存在感を放っています。代表作として、以下の作品が挙げられます。

『KURAYOSHI』、『地象』、『Composition』 (倉吉市): 鳥取県倉吉市の倉吉博物館・倉吉歴史民俗資料館周辺に設置された、初期の代表作。自然環境との調和を意識した作品群です。
『STONE WORK―双』(長野市): 長野市若里公園に設置された『STONE WORK―双』は、第15回長野市野外彫刻賞を受賞。対をなす二つの彫刻が、静かに空間を満たしています。
『STONE WORK―地標』(宇部市): 山口県宇部市の超高温材料研究センター前に設置された『STONE WORK―地標』。周囲の環境と一体となるように配置され、ランドマークとしての役割も担っています。
『起源』(中原悌二郎賞受賞): 第24回中原悌二郎賞優秀賞を受賞した『起源』。自然の力強さと生命の根源を感じさせる、力作です。
『起源―湖上に向かって』(洞爺湖町): 北海道洞爺湖ぐるっと彫刻公園に設置された『起源―湖上に向かって』。雄大な自然を背景に、その存在感を際立たせています。
『黒い柱』(立川市): 東京都立川市のファーレ立川に車止めとして設置された『黒い柱』。都市空間においても、独自の個性を発揮しています。
他にも、『海へのメッセージ』、『清流』、『双―海原』、『石の庭』、『垂直の波』、『起源・環』、『LANDSCAPE』など、多数の作品が各地に設置され、人々の目に触れています。

受賞歴：高く評価される芸術性

湯村氏の作品は、その芸術性が高く評価され、数々の賞を受賞しています。

安田火災（現・損保ジャパン）美術財団奨励賞展 彫刻部門優秀賞
第15回長野市野外彫刻賞
第13回現代日本彫刻展 宇部興産株式会社賞
第24回中原悌二郎賞優秀賞

まとめ：静寂の中に潜む力強さ

湯村光の作品は、一見静謐で穏やかな印象を与えますが、その中には自然の力強さと、人間の存在への深い問いが込められています。黒御影石という素材の特性を最大限に活かし、研磨面と破断面の巧みなコントラスト、そして自然環境との調和を追求した作品群は、見る者に深い感動を与え、長く記憶に残るものとなるでしょう。彼の作品は、これからも各地で人々の心に静かに語りかけていくことでしょう。

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