湯田上温泉

湯田上温泉

新潟県のほぼ中央、南蒲原郡田上町に位置する湯田上温泉（ゆたがみおんせん）は、旧国越後国に属する歴史ある温泉地です。その名は、この地から湧き出る「湯」と地名「田上」を組み合わせたことに由来すると伝えられています。

泉質と効能

湯田上温泉の泉質は、ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉です。源泉から供給される湯の温度は28℃と比較的なるめの冷鉱泉であり、通常は加温して利用されています。古くからこの湯には特別な効能があると信じられており、特に夏の土用の丑の日に湯に浸かると、その一年間を健やかに過ごすことができるという言い伝えが、現在も地元に根付いています。

温泉街と周辺施設

温泉街は、田上町のシンボルである護摩堂山の緑豊かな山麓に広がっています。落ち着いた雰囲気が漂うこの温泉地には、現在、旅人を温かく迎える四軒の旅館があります。それぞれの旅館が、昔ながらの湯治場の情緒を大切に守り続けています。

温泉街からわずかに離れた、丘を隔てた北側には、田上町が運営する多目的交流施設「ごまどう湯っ多里館」が立地しています。この施設内には、源泉を直接購入できる温泉スタンドや、気軽に立ち寄れる日帰り入浴施設が完備されており、地域住民だけでなく多くの観光客に利用されています。町はこの施設で提供される温泉を「田上ごまどう温泉」と称しており、本来の湯田上温泉街とは直接隣接していないものの、この「田上ごまどう温泉」を含めた広い範囲を指して、広義に「湯田上温泉」と呼ぶ場合もあります。

歴史

湯田上温泉は大変古い歴史を持つ温泉地です。文献によれば、享保三年（1738年）には既に湯が利用されていた記録があり、これが開湯とされています。開湯当初は、近隣の護摩堂山で修行を重ねていた僧侶たちがこの湯で心身の疲れを癒していたとされ、その優れた薬効から「薬師の湯」と呼ばれて尊ばれていました。

江戸時代に入り、文化九年（1812年）以降に編纂された『諸国温泉功能鑑』という、当時の主要な温泉地を格付けした文献には、越後国の名だたる五つの温泉の一つとして田上温泉がその名を連ねています。これは、この時代には既に湯治場として全国的にその名が知られていたことを示唆しています。さらに時代が下り天保十四年（1843年）には、新発田藩の藩士たちがこの地で湯治を行ったという記録も残されており、古くから健康維持や療養のために利用されてきた歴史がうかがえます。

比較的新しい動きとして、平成十一年（1999年）には新たな源泉の開発が行われました。この新源泉が、現在「田上ごまどう温泉」として多目的交流施設などで利用されており、湯田上温泉エリアの魅力と供給能力をさらに高める役割を果たしています。

アクセス

湯田上温泉へ公共交通機関を利用して向かう場合、JR信越本線の田上駅が最寄り駅となります。駅から温泉街までは、タクシーを利用するか、または一部の宿泊施設が提供する送迎サービスを利用するのが便利です。所要時間は駅よりおよそ5分程度です。

関連情報

湯田上温泉のすぐ近くにそびえる護摩堂山は、温泉の歴史とも深く関わりのある山です。山頂からは、越後平野や遠く日本海まで見渡せる素晴らしい眺望が広がっており、温泉訪問と合わせてハイキングを楽しむ人も多くいます。

訪問前に詳細な情報や各旅館、施設の営業状況などを確認するには、湯田上温泉旅館協同組合や田上町観光協会のウェブサイトを参照することをおすすめします。

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