湯田村 (滋賀県)

湯田村（ゆだむら）

湯田村（ゆだむら）は、かつて日本の滋賀県東浅井郡に属していた村である。その領域は、現在の長浜市の南東部に位置しており、JR西日本の北陸本線が通る虎姫駅の東方一帯を中心とした地域、および地域を結ぶ重要な幹線道路である国道365号線沿いに広がっていた。滋賀県の北東部、湖北地方と呼ばれるこの地域は、古くから豊かな自然環境に恵まれた農村地帯として知られ、湯田村もその一角を占めていた。現在は長浜市の一部となっているが、かつての自治体としての歴史を持つ地域である。

村域の地理的特徴としては、東部にそびえる雲雀山（ひばりやま）などの山々が村の境界を形成し、これらの山から流れ出す清らかな水が村内を潤していた点が挙げられる。主要な河川としては、草野川（くさのがわ）や田川（たがわ）があり、これらの河川は村内の田畑に水を供給する重要な役割を担っていた。肥沃な土地と豊富な水資源に恵まれた湯田村では、稲作を中心とした農業が盛んに行われており、美しい田園風景が広がっていた。山と川、そして水田が織りなす自然景観は、湯田村の象徴ともいえるものであった。

湯田村は、明治時代に日本全国で地方行政の近代化が進められた結果として誕生した自治体である。1889年（明治22年）4月1日、明治政府が公布した市制・町村制が施行されるに伴い、それまで個別の村として存在していた周辺の11の集落が合併し、一つの新しい村として湯田村が発足した。合併した村は以下の通りである。

三田村
大路村
内保村
湯次村
尊野村
平塚村
八島村
大依村
尊勝寺村
西野村
* 山之前村

これらの歴史ある集落が力を合わせる形で新たな自治体運営が始まった。東浅井郡内でも比較的広範囲にわたるこれらの集落を管轄する湯田村は、地域の中心的な役割を担うこととなった。

しかし、昭和時代に入り、国が推進する地方自治体の再編成、いわゆる「昭和の大合併」の波がこの地域にも及んだ。自治体の規模拡大による行政効率化や住民サービスの向上を目指す動きの中で、湯田村もその将来を選択することとなった。1954年（昭和29年）10月1日、湯田村は隣接していた田根村（たねむら）、下草野村（しもくさのむら）、七尾村（ななおむら）と対等合併を行った。この四つの村が合併し、新しい自治体である「浅井町（あざいちょう）」が発足したのである。この合併をもって、湯田村は自治体としては廃止され、約65年間の歴史に終止符を打った。合併によって誕生した浅井町は、東浅井郡の中核的な自治体として発展を遂げたが、その後さらに広域的な合併が進み、2006年（平成18年）2月13日には東浅井郡の虎姫町、湖北町と共に長浜市に編入された。したがって、旧湯田村の地域は現在、長浜市の一部となっている。

村域を通る交通網としては、歴史的な街道である北国西往還（ほっこくさいおうかん）が重要な役割を果たしていた。これは現在の国道365号線に相当し、古くから地域間の人や物の流れを支える主要な幹線道路であった。また、村のすぐ西側にはJR北陸本線が通っており、虎姫駅が最寄りの鉄道駅として利用されていた。ただし、現在の旧村域を縦断する高速道路である北陸自動車道は、湯田村が存続していた時期にはまだ開通しておらず、当時の交通体系には含まれていなかった。地域の交通は、主にこうした在来の道路網と鉄道によって成り立っていた。

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