満月の夜 君んちへ行ったよ

満月の夜 君んちへ行ったよ

「満月の夜 君んちへ行ったよ」は、日本の歌手・太田裕美によって1983年11月21日にリリースされたシングル楽曲です。この楽曲は、同年に発表されたアルバム『I do, You do あなたらしく、わたしらしく』に収録されていた中から、シングル盤として独立して発売されました。

音楽性の変革と新たな試み

このシングルは、太田裕美のキャリアにおいて重要な転換点を示す作品となりました。デビュー以来、彼女の音楽制作を支えてきたプロデューサー、白川隆三氏から、後に太田の伴侶となる福岡智彦氏へとプロデュース体制が変更された直後の楽曲にあたります。プロデューサー交代に伴い、楽曲の音楽性も大きく変化しました。

太田裕美はこれまで「木綿のハンカチーフ」に代表されるような、叙情的で物語性のあるフォークソング風の楽曲で広く知られていましたが、本作ではその従来のイメージから大胆に転換し、1980年代に隆盛を誇ったテクノ歌謡のサウンドを取り入れています。新しいプロデューサーとなった福岡智彦氏は、多くのニュー・ウェイヴ系のアーティストをメジャーシーンに送り出した実績があり、その彼独自の音楽的カラーがこの楽曲に色濃く反映されています。打ち込みのリズムやシンセサイザーを用いた、モダンで都会的なサウンドは、これまでの太田裕美の楽曲とは一線を画すものであり、リリース当時は多くのリスナーに新鮮な驚きを与え、太田にとっての異色作として受け止められました。

シングルのジャケットデザインも、楽曲の新しいサウンドに合わせて一新されました。1980年代のポップカルチャーやファッションの流行を反映した、カラフルでモダンなデザインと衣装が採用されており、視覚的にも太田裕美の新たなイメージを打ち出すものとなっています。

作詞家・銀色夏生とのタッグ

この楽曲の作詞は「山本みき子」名義で行われていますが、これは後に詩人・作家として、そして作詞家としても広く知られるようになる銀色夏生氏の別名義です。本作は、銀色夏生氏が作詞家として活動を開始したばかりの頃に手掛けた初期の作品の一つにあたります。彼女はその後も「山元みき子」という別の名義も使用しつつ、太田裕美に「青い実の瞳」や「雨の音が聞こえる」といった楽曲の詞を提供しており、太田の音楽世界に新たな彩りを加える存在となりました。

収録曲

シングル盤には以下の2曲が収録されています。

A面：満月の夜 君んちへ行ったよ (3分22秒)
作詞：山本みき子
作曲：太田裕美
編曲：大村雅朗
B面：お墓通りあたり (3分14秒)
作詞：山本みき子
作曲：太田裕美
編曲：大村雅朗

両楽曲とも、作詞は銀色夏生氏（山本みき子名義）、作曲は太田裕美自身が手掛け、編曲は大村雅朗氏が担当しています。

収録アルバム

この楽曲は以下のアルバムにも収録されています。

『I do, You do あなたらしく、わたしらしく』（オリジナルアルバム）
『GOLDEN J-POP/THE BEST 太田裕美|GOLDEN J-POP_THE BEST 太田裕美』（ベストアルバム）
『GOLDEN☆BEST 太田裕美 コンプリート・シングル・コレクション』（シングルコレクション）
『太田裕美 Singles 1978-2001』（シングルコレクション）

また、アルバム『太田裕美 All Songs Collection「オール・ソングス・コレクションⅡ」』には、この楽曲のリミックスバージョンが収録されています。

カバーバージョン

歌手・高見知佳氏が、自身のシングル『怒濤の恋愛』のカップリング曲として、この楽曲をカバーしています。

関連事項

銀色夏生
福岡智彦
テクノ歌謡
1983年の音楽

「満月の夜 君んちへ行ったよ」は、太田裕美の従来の音楽スタイルからの大胆な脱却と、新しいサウンドへの挑戦を象徴する楽曲として、彼女のキャリアの中でも特異な位置を占めています。

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