I do, You do

太田裕美にとって通算17作目のオリジナルアルバムとなる『I do, You do あなたらしく、わたしらしく』は、1983年10月にリリースされました。発売元はCBS・ソニーです。その後、2001年5月23日にはCDとして再発売され、規格品番SRCL-5091が付与されました。

このアルバムの制作では、前作『Far East』から引き続き、後の太田の伴侶となる音楽プロデューサーの福岡智彦がディレクションを担当しました。また、作詞陣には、当時まだキャリアの浅かった銀色夏生が迎えられています。彼女は今作では「山本みき子」というペンネームを用いており、続くアルバム『TAMATEBAKO』や『雨の音が聞こえる』では「山元みき子」名義を使用するなど、初期の活動における表記の変遷も見られます。

アレンジ面では、こちらも前作に続いて大村雅朗が手腕を発揮しています。加えて、川島裕二（クレジットでは川島UG）や、福岡がプロデュースを手がけたバンド・チャクラのリーダーであった板倉文も作曲や編曲に名を連ねるなど、多彩なアレンジャー陣が集結しました。さらに、シンガーソングライターの下田逸郎との共作による人気シリーズ「ロンリィ・ピーポー」からも2曲が収められており、バラエティに富んだ内容となっています。

音楽性において本作は、ニューヨークでの音楽活動を経て発表した前作『Far East』のB面「Tokyo Side」で試みられた方向性をさらに推し進めた作品と言えます。1980年代を象徴するオリエンタル・テイストのサウンドを取り入れながら、ニュー・ウェイヴ路線を継続・強化。さらに大胆なテクノ歌謡的アレンジを導入することで、『木綿のハンカチーフ』に代表される従来の清純派イメージから脱却し、アーティストとしての新たな一面を切り開きました。このサウンドアプローチは、続くアルバム『TAMATEBAKO』にも継承されていきます。

福岡智彦のディレクションによるテクノサウンドへの大幅なシフトは、古くからのファンからは賛否両論を巻き起こしましたが、時代の最先端を行くサウンドへの挑戦は、新たなリスナー層を獲得する契機ともなりました。特に、アルバムからシングルカットされた『満月の夜 君んちへ行ったよ』が有線放送などでオンエアされたことも追い風となり、1980年代に隆盛を誇ったYMOに代表されるテクノ・ポップ・ムーブメントの中で、新たなリスナー層を獲得することに成功しました。

アルバムのジャケットは、オレンジ色を基調とした背景に、アルバムタイトル『I do, You do』の黄色い文字が大胆に配され、当時の流行であったDCブランド風の衣装を身にまとった太田裕美がポーズを取るという、非常にカラフルでポップなデザインが特徴的です。

収録曲は以下の通りです。

満月の夜 君んちへ行ったよ
作詞：山本みき子／作曲：太田裕美／編曲：大村雅朗
アルバム発売後の1983年11月21日にシングルカットされました。
葉桜のハイウェイ
作詞：山元みき子／作曲：板倉文／編曲：大村雅朗
シングル『ロンリィ・ピーポーII』のカップリング曲です。
お墓通りあたり
作詞：山本みき子／作曲：太田裕美／編曲：大村雅朗
シングル『満月の夜 君んちへ行ったよ』のカップリング曲です。
ガラスの週末
作詞：山元みき子／作曲：板倉文／編曲：大村雅朗
こ・こ・に・い・る・よ
作詞：山本みき子／作曲：太田裕美／編曲：大村雅朗
移り気なマイ・ボーイ
作詞：山本みき子／作曲：太田裕美／編曲：大村雅朗
パスしな!
作詞：山本みき子／作曲：川島UG／編曲：バナナ
ロンリィ・ピーポーIII
作詞：下田逸郎／作曲：太田裕美／編曲：板倉文
ロンリィ・ピーポーII
作詞：下田逸郎／作曲：岡本一生、亀井登志夫／編曲：大村雅朗
33回転のパーティー
* 作詞：山本みき子／作曲・編曲：板倉文

『I do, You do あなたらしく、わたしらしく』は、太田裕美が自身の音楽性を積極的にアップデートし、新たなサウンドに挑戦した意欲作であり、1980年代の音楽シーンにおける彼女の重要なターニングポイントを示すアルバムと言えるでしょう。

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