満洲に関する露清協定

満洲に関する露清協定：帝国の野望と列強の思惑

満洲に関する露清協定は、1900年11月11日にロシア帝国と清国（大清帝国）の間で秘密裏に締結された協定です。この協定は、ロシア側の遼東租借地司令官エヴゲーニイ・アレクセーエフと、清国側の盛京将軍増祺（ヅェンキ）の間で交わされました。第二次露清密約とも呼ばれるこの協定は、列強の知るところとなり、国際的な問題として浮上しました。一度は廃案となったものの、その後の交渉を経て、1902年の満洲還付条約へと繋がります。

義和団の乱とロシアの進出

協定締結の背景には、山東省で発生した義和団の勢力拡大がありました。義和団の活動は満洲にも広がり、1896年の露清密約でロシアが敷設権を得ていた東清鉄道が攻撃の対象となりました。建設途中の東清鉄道南支線（後の南満洲鉄道）も被害を受け、ロシアはこれに即座に反応。ニコライ2世の命令により、鉄道防衛のため15万を超える兵士が派遣されました。

1900年7月3日、ロシアは黒竜江沿いのブラゴヴェシチェンスクでの発砲事件を口実に戦闘を開始（露清戦争）。各地で清国軍を破り、8月にはハルビン、チチハル、遼陽、奉天といった満洲の主要都市を次々と制圧し、満洲の大部分を占領下に置きました。ロシアは占領の正当性を主張するため、清国の領土保全などを謳った口上書を関係各国に通告しましたが、実際には満洲の保護領化を進めていきました。

協定の内容

ロシア軍政下において、アレクセーエフは増祺との間で密約交渉を進め、以下の内容を含む協定が結ばれました。

奉天省内におけるロシア兵の駐留とそのための清国官憲によるロシア官職員の礼遇（第二条）
義和団に加担した清国軍の解散と武装解除、兵器のロシアへの引き渡し（第三条）
ロシア軍が一時管理する営口などの地の清国への返還（第五条）
奉天城へのロシア政務官の配置（第七条）
* 省内における清国警察隊のみでは鎮圧不可能な事変発生時のロシアへの協力要請（第八条）

列強の反発と交渉の打ち切り

増祺から協定内容を受け取った李鴻章は、即時調印を避け、ロシアとの交渉をサンクトペテルブルクで行うことを決定しました。しかし、協定の内容はすぐに外部に漏れ、列強、特に日本がロシアの動向に強い警戒感を示しました。日本政府はロシアに問い合わせましたが、ロシア側は虚報であると回答。小村寿太郎駐清公使は、ロシアの満洲占有の意図を確信し、清国政府に抵抗を促しました。

交渉はサンクトペテルブルクに移って続けられましたが、1901年4月、ロシア政府が「満洲に関する露清商議を断絶する」旨を官報で発表し、交渉は打ち切られました。この協定は、ロシアの満洲における権益拡大の試みを示すものであり、その後の日露戦争へと繋がる要因の一つとなりました。

満洲に関する露清協定は、義和団の乱という混乱に乗じて、ロシアが満洲を勢力下に置こうとした帝国主義的な野望を示すものでした。しかし、列強の思惑や清国内部の抵抗により、その企ては頓挫し、東アジアの国際関係に大きな影響を与えることになったのです。

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