満蒙開拓平和記念館

満蒙開拓平和記念館は、長野県下伊那郡阿智村に位置する、満州移民の歴史を専門とする国内唯一の民間施設です。この記念館は、旧満州（現在の中国東北部）への満蒙開拓団の入植がもたらした苦難の歴史を後世に伝え、平和の尊さを深く理解してもらうために設立されました。

設立の背景

長野県、特に下伊那地方は、当時、深刻な人口過剰に悩まされていました。農村部では人口を支えきれず、生活に困窮する人々が多くいました。この状況を打開するため、国策として推進された満蒙開拓移民に多くの人々が参加しました。長野県は、全国で最も多くの開拓移民を送り出した地域の一つです。

開拓団員の高齢化が進むにつれて、開拓の歴史と実情、そして敗戦後の引揚げの苦しさを後世に伝える必要性が高まりました。満蒙開拓平和記念館は、このような状況の中で、全国初の施設として開設されました。また、中国残留孤児の帰国に尽力した阿智村出身の僧侶、山本慈昭の活動を紹介する資料も展示されています。

建設の経緯

記念館の建設は、飯田日中友好協会が中心となって進められました。2006年に建設事業が採択され、長野県知事への協力要請から始まりました。その後、建設準備会が組織され、資金集めが開始されました。2009年には、阿智村との間で建設予定地の賃貸契約が締結され、長野県議会や民主党幹事長への協力要請が行われました。また、「山本慈昭記念館」との統合も決定しました。

2010年には、一般社団法人の認可を取得し、長野県の補助金を受けて「満蒙開拓歴史展」を開催しました。その後も、南信州広域連合や長野県からの財政支援、国からの補助金を得て建設が進められました。そして、2013年4月、満蒙開拓平和記念館が開館しました。2019年には、団体学習の場としてセミナー室や映像室を備えた「セミナー棟」が完成し、施設が拡充されました。

展示内容

館内展示は8つのセクションに分かれています。「序章」では、満蒙開拓に至る時代背景を解説しています。当時の映像展示では、広大な土地を馬で耕す様子を壁一面に映し出し、来館者を圧倒します。「敗戦と逃避行」では、ソ連軍の参戦と日本軍の撤退後、置き去りにされた開拓団員たちが現地からの襲撃を恐れながら、コロ島を目指す様子を地図上で示しています。

記念館の活動

記念館では、満蒙開拓団の生活に関する証言を集める活動も行っています。2014年には、中国黒竜江省方正県で、現地の目撃者から入植状況や生活の実態、敗戦前後の逃避行の状況などを聞き取り調査を実施しました。これらの資料や証言は、日本国内で公開されています。

また、2016年には明仁天皇と皇后美智子（いずれも当時）が行幸され、翌年には天皇・皇后の来訪を記念する碑が建立されました。これらの活動を通じて、満蒙開拓の歴史を風化させることなく、後世に伝えていくことを目指しています。

利用情報

開館時間: 9時30分～16時30分
定休日: 火曜日（祝日の場合は翌日）、第2・4水曜日、年末年始
入館料: 一般600円、小中高生300円（団体20名以上は100円引き）

交通アクセス

中央自動車道飯田山本インターチェンジからアクセス可能です。

関連情報

満蒙開拓平和記念館は、日中友好協会、満蒙開拓をテーマにした小説「大地の子」や、乙女の碑などとも関連しています。記念館の公式ウェブサイトでは、詳しい情報や展示内容、イベント情報などが掲載されています。

満蒙開拓平和記念館は、満蒙開拓の歴史を学び、平和の尊さを考える上で、重要な場所となっています。

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