山本慈昭

山本慈昭：中国残留孤児の父

山本慈昭（1902年1月25日 - 1990年2月15日）は、長野県出身の僧侶であり、福祉活動家です。本名を山本梅雄といい、比叡山で修行を積んだ後、阿智村の長岳寺住職となりました。彼は、中国残留日本人孤児の肉親捜しに生涯を捧げ、200人以上の孤児とその家族との再会を実現させた人物として、「中国残留孤児の父」と称えられています。また、その功績が認められ、吉川英治文化賞を受賞しています。

満州での悲劇

1945年、山本は阿智村から満蒙開拓移民団の一員として満州に渡りました。教師役として教え子たちを引率しましたが、終戦直後のソ連軍侵攻により状況は一変。混乱の中で妻子と離れ離れになり、シベリアに抑留されてしまいます。帰国後、家族の死を知り、開拓団の多くも帰国が叶わなかったという悲劇に見舞われました。

中国残留孤児との出会い

1965年、山本は中国在住の残留日本人からの手紙をきっかけに、中国残留孤児の存在を知ります。彼は、寺の住職としての職務の傍ら、厚生省など関係各所を奔走し、孤児たちの肉親捜しを始めました。しかし、当初は国からの支援を得られず、孤児たちの情報も十分に活用されていませんでした。

肉親捜しへの情熱

1969年、阿智郷開拓団の生存者からの告白により、多くの子供たちが生存している可能性を知ります。この告白は、山本に長女と教え子たちとの再会への希望を与え、彼の活動をさらに加速させました。新聞やテレビでの報道を通じて、孤児たちの存在が広く知られるようになり、NHKの協力により、中国全土に向けて肉親捜しの呼びかけが行われました。

日中友好手をつなぐ会

1972年、日中国交正常化を機に、山本は「日中友好手をつなぐ会」を設立し、本格的な孤児捜し活動を開始しました。彼は、寺の収入や自身の年金も活動資金に充て、献身的に活動しました。この頃から茶人帽をトレードマークとするようになり、「最後の1人を捜し出すまで」という強い決意を示しました。

肉親との再会

1972年、ついに残留孤児と肉親の再会が実現しました。この出来事はNHKで報道され、社会的な関心が高まりました。山本は、地道な活動を続け、1980年には177人もの孤児と肉親の再会を成功させました。

訪中調査と長女との再会

1980年、山本は「孤児慰問」という名目で中国を訪問し、現地で孤児たちの聞き取り調査を行いました。この際、長女の消息も判明し、1982年に再会を果たしました。その後も、9回にわたり訪中調査を行い、多くの孤児たちの肉親捜しに尽力しました。

国の支援と施設設立

山本の活動は、ついに国を動かし、1981年から国による集団訪日調査が開始されました。山本は、来日した孤児たちの生活支援のため、自宅を開放し、後に「広拯会館」を設立しました。この施設は、孤児たちの日本語学習や生活習慣の習得を支援し、精神的な支えともなりました。

晩年と遺志

中国残留孤児の肉親捜しに目処がついた後、山本は北朝鮮の残留孤児問題に取り組もうとしましたが、病に倒れ、1990年に88歳で亡くなりました。彼の葬儀には、多くの孤児や肉親が集まり、その遺志は今も受け継がれています。

もう一度検索