源九郎稲荷神社

源九郎稲荷神社：歴史と伝説に彩られた小さな稲荷

奈良県大和郡山市洞泉寺町に鎮座する源九郎稲荷神社は、古くから地元の人々に「源九郎さん」と呼ばれ親しまれている神社です。その歴史は古く、源義経にまつわる伝説や、白狐の不思議な物語が数多く語り継がれています。小さな社殿ながらも、日本三大稲荷の一つに数えられるなど、その信仰は広く深く根付いています。

源九郎狐と義経

源九郎稲荷神社の起源は、源義経が兄・頼朝との戦いに際し、幾度もこの地に助けられたという伝説にまで遡ります。義経は、その恩を報いるため、この稲荷に「源九郎」の名を贈ったと伝えられています。この伝説は、神社の名称の由来ともなっており、神社と源義経、そして源九郎狐の結びつきを象徴するものです。

白狐の伝説

神社には、源九郎狐にまつわる様々な伝説が残されています。例えば、「忠臣狐伝説」では、源九郎狐が佐藤忠信に化け、静御前を守り抜いたという物語が伝えられています。また、「妖刀子狐丸伝説」では、源九郎狐の助けにより大蛇を退治し、宝剣「小狐丸」が発見されたという伝説が残されています。さらに「綿帽子を買った狐伝説」は、冬の夜に綿帽子を買いに来た狐の姿をした女性が、代金を源九郎神社へ取りに来いと言い残したという不思議な物語です。これらの伝説は、源九郎狐の霊験あらたかな力と、人々への慈愛深さを物語っています。

豊臣秀長と郡山城

天正13年（1585年）、翁の姿をした白狐が現れ、郡山城の南に茶枳尼天（稲荷）を祀れば城の守護神になると告げたという伝説があります。この白狐こそが源九郎狐であり、郡山城主・豊臣秀長はこれを聞き入れ、洞泉寺を建立し、茶枳尼天を祀ったと伝えられています。秀長自身も境内に源九郎稲荷大明神を祀り、城の鎮守としたことから、源九郎稲荷神社は、郡山城の歴史とも深く関わっていることがわかります。

歴史と遷座

享保4年（1719年）に現在地に移され、1925年（大正14年）には現在の社殿が完成しました。幾度かの遷座を経て現在の地に落ち着いた源九郎稲荷神社は、長い歴史の中で人々の信仰を集め続け、現在に至っています。

春季大祭

毎年4月の第一日曜日には、「源九郎稲荷春季大祭」が開催されます。白狐面をつけた子供たちが練り歩く賑やかな行列は、地域住民にとって大切な行事であり、神社の信仰の深さを象徴するものです。この祭りは、五穀豊穣や商売繁盛を祈願するものであり、地域社会の繁栄に貢献してきた神社の役割を改めて感じさせてくれます。

境内とアクセス

神社の境内には、本殿、拝殿、社務所、源光稲荷社などがあります。本殿は1925年に再建されたものであり、古き良き日本の神社建築を代表するものです。近鉄橿原線近鉄郡山駅から徒歩7分とアクセスも良好で、多くの人が訪れる観光スポットとなっています。

その他の伝承と注意点

源九郎稲荷神社に関する情報の中には、信憑性に欠けるものや、著作権上の問題を抱えるものも存在します。特に、インターネット上には、大和郡山の伝承とは異なる、他の地域（例えば大阪府松原市）の伝承を掲載しているサイトも見られます。これらの情報を利用する際には、十分な注意が必要です。大和郡山の源九郎稲荷神社が伝えるべきは、大和郡山に伝わる独自の伝承であることを認識することが重要です。

まとめ

源九郎稲荷神社は、源義経ゆかりの神社であり、数々の伝説に彩られた、歴史と信仰の深い神社です。小さな社殿ながら、その霊験は広く知られ、地域住民に愛されています。訪れる際には、歴史と伝説に思いを馳せながら、静かな境内を散策してみてはいかがでしょうか。

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