源泉の感情

『源泉の感情』 – 三島由紀夫対談集

『源泉の感情』は、著名な作家であり劇作家である三島由紀夫が、1952年から1968年にかけて行った多彩な対談を収めた書籍です。この対談集には、小林秀雄や大江健三郎、舟橋聖一といった多くの文人や芸術家が登場し、彼らとの深い対話を通して、彼の思想や芸術観が語られています。これらの対話は、時代の文化や社会情勢を色濃く反映しており、当時の日本における文学と演劇、伝統芸能に対する考察も含まれています。

この書籍は1970年10月30日に河出書房新社より初刊され、2006年には内容を一部入れ替えた文庫版も出版されました。特に、書名の「源泉の感情」は、詩人ヘルダーリンの『追想』からの引用とされ、三島自身の著作『愛の疾走』においても同様の感情が表現されています。彼がこの名前を義務感とは別に選んだ背景には、自らの内面的な動きや芸術における情熱があると言えるでしょう。

収録されている内容は多岐にわたり、たとえば「美のかたち――『金閣寺』をめぐって」では小林秀雄との対話が展開され、1957年1月号の『文藝』に掲載されました。このように、文芸や演劇、茶道といった日本の伝統文化についての対談が並び、それぞれの対話者の見解や三島の考えが交わされています。

例えば、煩悩や芸術と国家権力をテーマにした「エロチシズムと国家権力」や、文武両道の倫理について議論した「文武両道と死の哲学」においては、現代社会における価値観や道徳観の変容に注目した深い議論が展開されます。

また、「日本の芸術」シリーズでは、歌舞伎や能楽、長唄、浄瑠璃、舞踊など、さまざまな伝統芸能が取り上げられ、三島がそれらに対して持っていた視点や評価が明らかになっています。特に、伝統芸能に対する真摯な姿勢や、伝統と現代が交わる瞬間を捉える力は、今日の日本文化を考える上で重要な指針となるでしょう。

『源泉の感情』を通じて、三島由紀夫はただ芸術家としての側面を示すだけでなく、人間としてのさまざまな思索や苦悩も垣間見せています。そのため、この対談集は単に過去の対話を記録したものにとどまらず、今を生きる私たちにさまざまな示唆を与えてくれる作品として位置づけられています。

最後に、この対談集は、三島由紀夫が抱えていた内面的な葛藤や、彼独自の美意識に触れるための貴重な資料でもあります。彼の文句や思考の構造を理解し、自らの文化への理解を深めるための一助として、多くの人々に読まれるべき一冊です。

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