準備預金制度

準備預金制度とは

準備預金制度とは、市中銀行が預金残高に応じて、その一定割合の金額を中央銀行に預け入れることを義務付ける制度です。この制度は、金融機関の支払準備金を確保するとともに、中央銀行が金融政策を行うための重要な手段として機能しています。

準備預金制度の仕組み

金融機関は、顧客からの預金引き出しに備えて、一定の支払準備金を保有しておく必要があります。準備預金制度では、この支払準備金を法的に制度化し、預金残高に応じて一定割合（準備預金率）を中央銀行に預け入れることを義務付けています。

準備預金率が引き上げられると、金融機関は中央銀行に預け入れる預金残高を増やす必要が生じます。その結果、金融機関は企業への融資を減らすなどして資金を確保するため、市場に流通するお金の量（マネーサプライ）が減少し、金利が上昇します。逆に、準備預金率が引き下げられると、金融機関の資金が潤沢になり、貸し出しが増加するため、マネーサプライが増加し、金利が低下します。このように、準備預金制度は金融政策を通じて市場の金利やマネーサプライを調整する役割を果たします。

各国の準備預金制度

アメリカ

アメリカでは、法律に基づき、金融機関は預金残高に応じて一定額を連邦準備銀行に預け入れることが義務付けられています。

日本

日本では、1957年に施行された「準備預金制度に関する法律」に基づき、金融機関は預金残高に応じて一定額を日本銀行の当座預金に預け入れることが義務付けられています。預け入れを義務付けられた最低金額は「法定準備預金額」または「所要準備額」と呼ばれます。準備預金制度の対象となる金融機関は、銀行、預金残高が1600億円超の信用金庫、農林中央金庫などです。

準備預金率は、預金の種類や預金残高に応じて定められており、日本銀行の金融政策決定会合で決定されます。法定準備額は、毎月1日から月末までの預金残高に準備預金率を掛けたものの平均値であり、翌月の16日から翌々月の15日までの間に日本銀行の当座預金に積み立てることが義務付けられています。

イギリス

イギリスでは、イングランド銀行がオーバーナイト金利の安定化を目的として、2006年5月から金融機関が各自の都合に合わせてイングランド銀行に資金を積み立てる疑似準備預金制度を導入しています。

準備預金制度と金融政策

準備預金制度は、金融政策の重要な手段の一つとして活用されています。中央銀行は、準備預金率の調整を通じて、市場の金利やマネーサプライをコントロールし、経済の安定化を図ります。かつては、政策金利の変更が難しかった時代に、準備預金率の操作が主要な金融政策手段として用いられていましたが、近年では金融自由化が進み、準備預金制度の金融政策手段としての利用は少なくなっています。その代わりに、中央銀行は、銀行が法定準備額を積み立てる速度を調整するなど、より柔軟な方法で金融調節を行うようになっています。

用語解説

法定準備預金額（所要準備額）: 金融機関が中央銀行に預け入れることを義務付けられた最低金額。
準備預金率: 預金残高に対する法定準備預金額の割合。
マネーサプライ: 市場に流通するお金の量。

関連項目

管理通貨制度
金融政策
マネーサプライ
物価
信用創造
部分準備銀行制度

脚注

外部リンク

準備預金制度に関する法律 - e-Gov法令検索
* 質問準備預金制度とは何ですか？　超過準備とは何ですか？ - 日本銀行

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