マネーサプライ

マネーサプライ(通貨供給量)とは



マネーサプライとは、金融機関と中央政府を除く国内の経済主体が保有する通貨の合計を指します。マネーストックとも呼ばれ、通貨供給量や通貨残高と訳されることもあります。この指標は、経済全体の通貨量を把握するために用いられます。

マネーサプライと金融政策



マネーサプライは、中央[[銀行]]が供給するマネタリーベースを基に、金融機関の信用創造によって増加すると考えられています。しかし、イングランド[[銀行]]の見解によれば、中央[[銀行]]がマネタリーベースを操作しても、民間の借り入れ需要がなければ、銀行の貸し出しは増えず、結果としてマネーサプライも増加しません。つまり、マネーサプライの増減は、借り手の資金需要に大きく左右されるのです。

マネーサプライは物価と密接な関係があり、一般的にはマネーサプライの増加が物価上昇を引き起こすと考えられています。そのため、多くの中央[[銀行]]は金融政策の中間目標としてマネーサプライの動向を注視しています。

エコノミストの坂東俊輔氏は、公開市場操作によるマネーサプライ管理の重要性を指摘しつつも、マネーサプライの安定的な管理が必ずしも経済の安定に繋がるとは限らないと述べています。また、経済学者の原田泰氏らは、貨幣供給量を1%増加させると、実質GDPが0.18%増大するという研究結果を示しています。

日本[[銀行]]は、マネーサプライを金融政策の目標としていませんが、マクロ経済の動向を把握する上で重要な指標として活用しています。

マネーサプライと財政政策



政府の財政支出は、マネーサプライに影響を与えます。政府が国債を発行し、その資金を公共事業などの支出に充てると、民間預金が増加し、結果としてマネーサプライが増加します。逆に、政府が債務を返済すると、マネーサプライは減少します。

マネーサプライの統計



マネーサプライの統計は、通貨の範囲によっていくつかの種類に分類されます。日本では、日本[[銀行]]がM1、M2、M3、広義流動性という4つの指標を発表しています。これらの指標は、金融機関や金融商品の範囲が異なり、それぞれ異なる視点から通貨量を捉えることができます。

各指標の詳細



M1: 現金通貨預金通貨の合計から、金融機関保有の小切手手形を差し引いたもの。
M2: 現金通貨と国内銀行等に預けられた預金の合計。
M3: M1に準通貨(定期預金など)と譲渡性預金(CD)を加えたもの。
広義流動性: M3に、金銭信託、投資信託金融債などを加えたもの。

日本[[銀行]]は、M3を最も代表的な統計としています。

各国のマネーサプライ



アメリカ



アメリカの連邦準備銀行(FRB)は、以前はM1、M2、M3の3つの統計を発表していましたが、2006年以降はM3の公表を中止し、M1とM2のみを発表しています。

M1: 現金と当座預金
M2: M1に、流動性の高い預金口座を加えたもの

ユーロ



ユーロ圏では、欧州中央[[銀行]](ECB)が以下の指標を発表しています。

M1: 市中の貨幣+夜間金庫
M2: M1 + 満期2年までの定期預金 + 3ヶ月までに償還される口座
M3: M2 + 現先取引+ マネー・マーケット・ファンド(MMF) + 2年以内の債券

日本



現在のマネーストック統計(旧マネーサプライ統計)は、以下の通りです。

M1: 現金通貨 + 預金通貨
M2 + CD: M1 + 準通貨 + CD
M3 + CD: (M2 + CD) + 郵便貯金 + 農協、漁協、信組、労金の預貯金 + 金銭信託・貸付信託
広義流動性: (M3 + CD) + 金銭信託以外の金銭の信託 + 投資信託 + 金融債 + 金融機関発行CP + 債券現先・現金担保付債券貸借 + 国債・FB + 外債

イギリス



イギリスでは、以下の2つの指標が用いられています。

M0: 現金通貨 + 市中銀行イングランド[[銀行]]預金
M4: 現金通貨 + 預金 + 住宅貸付組合出資

中国



中国では、M2の伸び率が注目されています。2012年時点で、GDPに対するM2の比率は180%と、多くの先進国に比べて高い水準にあります。

インド



インド準備銀行は、以下の指標を発表しています。

M0 (Reserve Money): 通貨流通量 + 銀行インド準備銀行預金 + インド準備銀行のその他預金
M1: 市中の通貨 + 公衆の預金銀行システムの要求払預金 + インド準備銀行のその他預金
M2: M1 + 郵便貯蓄銀行の貯蓄預金
M3: M1 + 銀行システムの定期預金
M4: M3 + 郵便貯蓄銀行のすべての預金(国民貯蓄証書を除く)

オーストラリア



オーストラリア準備銀行は、以下の指標を発表しています。

M1: 民間非銀行部門の通貨銀行 + 当座預金
M3: M1 + 民間非銀行部門のその他すべての銀行預金
Broad Money: M3 + NBFIsによる民間部門からの借入金、および後者の通貨および銀行預金保有額を差し引いたもの
Money Base: 民間部門による紙幣と硬貨の保有額に、オーストラリア準備銀行(RBA)の銀行預金および民間非銀行部門に対するその他RBA負債を加えたもの

ニュージーランド



ニュージーランド準備銀行は、以下の指標を発表しています。

M1: 公衆が保有する紙幣と硬貨に、小切手預金を加えたものから、機関間の小切手預金中央政府預金を差し引いたもの
M2: M1 + M1以外のすべてのコールファンディング(コールファンディングには、即日資金と、違約金なしで破棄できる条項での資金が含まれます)から、機関間のM1以外のコールファンディングを差し引いたもの
M3: 最も広範な金融集計。M3機関のすべてのニュージーランドドル資金と、非M3機関との準備銀行レポを表します。M3は、公衆が保有する紙幣と硬貨に、ニュージーランドドルの資金を加え、M3機関間の請求と中央政府預金を差し引いたもの

関連情報



金利政策
公定歩合
準備預金制度
マネタリズム

外部リンク



日本[[銀行]] 統計:マネーストック
日本[[銀行]] マネーストック統計のFAQ
All About ビジネス学習:マネーサプライとは?

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