溝尾茂朝

溝尾茂朝（三沢秀次）：明智光秀に仕えた忠臣の生涯

戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将、溝尾茂朝。明智光秀の家臣として、その生涯は数々の史料から垣間見ることができます。特に、三沢秀次という人物との同一人物説は、彼の足跡を辿る上で重要な要素となっています。光秀から明智姓を与えられ、明智茂朝とも呼ばれた彼は、明智五宿老の一人としても知られています。

越前国の代官と丹波攻め

溝尾茂朝は、『細川家記』の永禄11年（1568年）7月10日条に「溝尾庄兵衛」として初登場します。これは、光秀が足利義昭と織田信長を仲介した際に同行していた際の記録です。その後、天正元年（1573年）の朝倉氏滅亡後、越前国の行政を担うことになります。羽柴秀吉、滝川一益と共に越前国の占領行政に携わった後、9月末からは「三沢小兵衛秀次」として、木下祐久、津田元嘉と共に越前国北ノ庄の代官に任命されます。この3人は「北庄ノ奉行信長殿御内三人衆」と呼ばれ、越前支配において重要な役割を果たしました。桂田長俊が越前の守護代を務めていましたが、実際の政務は3人の代官が掌握していたとされています。天正2年（1574年）の一向一揆では、一揆勢に襲われ、京都へ逃れる事態も経験しています。

天正3年（1575年）からは、光秀の丹波攻めに従軍。天正4年（1576年）には、丹波で国人に対して「三沢惣兵衛尉秀儀」として公事を免除する権限を行使しています。天正7年（1579年）4月の光秀の書状には、「小兵衛」が「明智」と記されており、明智姓の使用が確認できます。

本能寺の変と最期

天正10年（1582年）5月には、徳川家康の接待役として光秀に従事したとされています。そして、運命の年である天正10年、本能寺の変が勃発します。『信長公記』（池田家本）によると、本能寺の変前には重臣合議に参加し、信長を討つことに賛成したとされています。ただし、他の自筆本には彼の名前がなく、加筆の可能性も指摘されています。

山崎の戦いでは光秀と共に戦い敗北。光秀と共に坂本城へ逃亡を試みますが、光秀が落ち武者狩りに襲われ致命傷を負うと、光秀の命令で介錯を務めました。その後、光秀の首を持ち帰ろうとしましたが、再び落ち武者狩りに遭遇し、首を隠して坂本城へ逃げ帰ります。そこで自害したと伝えられています。享年45歳。彼の介錯の行為は、主君への忠義を尽くした証と言えるでしょう。光秀の首は後に織田信孝に届けられました。

溝尾茂朝と三沢秀次の同一人物説

このように、越前の代官「三沢秀次」や、丹波攻めの際に登場する「三沢秀儀」は、溝尾茂朝と同一人物であると推測されています。彼は明智家中の政務に深く関与し、光秀の信頼厚い家臣であったと考えられます。数々の史料から彼の存在を辿ることで、明智光秀とその家臣団の実像に迫ることができます。

関連作品

溝尾茂朝は、数々の時代劇作品にも登場しており、その生涯は多くの人の想像力を掻き立ててきました。以下に、代表的な作品を挙げます。

ぶらいかん長兵衛（1930年）
森蘭丸（1955年）
敵は本能寺にあり（1960年）
残酷の河（1963年）
続・忍びの者（1963年）
国盗り物語（1973年）
太閤記（1987年）
春日局（1989年）
戦国武士の有給休暇（1994年）
影武者 織田信長（1996年）
秀吉（1996年）
功名が辻（2006年）
* 軍師官兵衛（2014年）

これらの作品を通して、溝尾茂朝の生き様を改めて知ることができるでしょう。彼の生涯は、戦国時代の激動を象徴する一つの物語として、現代にまで語り継がれています。

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