滑走路視距離

滑走路視距離（RVR）

滑走路視距離は、英語で Runway Visual Range と呼ばれ、その頭文字をとってRVRと略されます。これは航空気象の分野で使用される専門用語で、航空機の操縦士が滑走路上から前方を見通すことができる水平距離を指します。

具体的には、滑走路の中央線上にいるパイロットが、滑走路の舗装面に描かれた標識や、滑走路の縁、あるいは中心線を示す灯火をどのくらいの距離まで識別できるかを示すものです。

測定と表示

RVRは、現代の空港では主に前方散乱計と呼ばれる自動観測機器によって測定されています。一部の空港では透過率計が使用されることもあります。これらの機器が大気の透明度を測定し、RVR値を算出します。測定されたRVR値は、通常、メートルまたはフィートで表示されます。

RVRの最大値は、一般的に2,000メートルまたは6,500フィートとされています。この値を超える視程がある場合、それ以上の正確な距離は着陸判断において大きな差とならないため、航空気象通報において具体的な数値を伝える必要はないとされています。

航空運航における重要性

ほとんどの状況において、航空機のパイロットは最終的に滑走路を目視で確認して着陸操作を行います。そのため、RVRは計器進入を行う際の最も重要な気象に関する最低基準の一つとして位置づけられています。

RVRの情報は、航空気象通報であるMETARやSPECIといった定時・特別気象報告の中に含まれて世界中の航空関係者に配布されます。また、航空管制官が測定機器から得られた最新のRVR値を、進入中の航空機に対して直接伝えることも一般的です。これにより、パイロットは現在の気象条件下で安全に進入・着陸が可能かどうかを判断するための重要な材料とします。

測定方法の変遷

RVRの測定は、かつては人手によって行われていました。滑走路の末端に車両を駐機させ、そこから滑走路灯がいくつ見えるかを数えたり、管制塔から特定の方向を向いた滑走路灯を確認したりして、見えた灯火の数から距離を換算していました。このような人間による観測は、現在でも自動測定機器が故障した場合などの代替手段として利用される可能性はありますが、現代ではRVRという名称で呼ばれることは稀です。

現在では、多くの主要空港では自動化された滑走路視距離計を用いて大気の透明度からRVRを算出しています。これらの機器は、特に精密な計器進入が設定されている滑走路の接地点付近に設置されるのが一般的です。滑走路の両端と中央の合計3箇所に設置されるケースも多く見られます。

最低気象条件としての位置づけ

計器進入の際に求められる最低気象条件は、以前は地上視程やRVR、国によっては雲高なども考慮されていましたが、世界的な傾向として、周回進入（空港上空を旋回して着陸する方式）を除く全ての計器進入において、主要な基準としてRVRが採用される方向に改訂が進んでいます。日本でも、この国際的な流れを受けて2006年秋以降、順次RVRを基準とする方式が導入されました。ただし、周回進入については引き続き地上視程が基準として用いられています。

地上視程換算値（CMV）

RVRを測定するための機器が設置されていない空港や、機器が故障している場合など、RVRの情報が得られない状況も存在します。このような場合には、地上視程換算値（Converted Meteorological Visibility; CMV）がRVRの代替として用いられることがあります。

CMVは、気象観測によって得られた卓越視程（大部分の方向で見通せる距離）の値に、その時の航空灯火の運用状況（点灯しているかなど）や昼夜の別に応じて定められた一定の倍率をかけて算出されます。ただし、このCMVはあくまで代替値であり、航空機の離陸や、高度な精密進入であるILSカテゴリーII/IIIによる進入には使用することができません。これらの操作には、正確なRVR情報が不可欠とされています。

もう一度検索