漆生駅

漆生駅

漆生駅（うるしおえき）は、かつて福岡県嘉穂郡稲築町（現在の嘉麻市）漆生に設けられていた、日本国有鉄道（国鉄）漆生線の鉄道駅です。漆生線が廃止された1986年（昭和61年）4月1日をもって、その歴史に幕を下ろしました。

歴史

漆生駅の開業は、1913年（大正2年）8月20日に遡ります。当初は旅客輸送を行わず、貨物のみを取り扱う駅でした。地域産業の発展に伴い、1920年（大正9年）5月10日からは旅客の扱いも開始され、地域の交通拠点としての機能を持つようになります。

さらに1923年（大正12年）5月21日には、当駅から（貨）稲築駅へ向かう貨物支線が開通し、貨物輸送の重要性が増しました。

漆生駅は長年にわたり漆生線の終点として機能していましたが、油須原線構想の一部として、1966年（昭和41年）3月10日に当駅から嘉穂信号場を経て下山田駅まで路線が延伸されました。これにより、漆生駅は路線の途中駅となります。

しかしながら、この延長区間を経由する列車は極めて少なく、大半の列車は依然として当駅で折り返す運行形態が続きました。延長開業から3年後でも一日4往復、営業末期には一日わずか3往復と、当駅より先の区間の利便性は限定的でした。

貨物輸送に関しては、1968年（昭和43年）11月1日に当駅と（貨）稲築を結んでいた貨物支線が廃止され、石炭輸送の衰退と共に貨物取扱いの重要性は薄れていきます。

1974年（昭和49年）3月5日からは駅業務が外部に委託される業務委託駅となりました。そして、国鉄再建に伴うローカル線整理の中で、漆生線全線が廃止されることとなり、1986年（昭和61年）4月1日、漆生駅も70年以上にわたる役割を終え、廃駅となりました。

駅構造

駅の構造は、地上に島式ホームが1面設けられ、2本の線路（2線）が敷かれた形態でした。また、かつては貨物輸送のための側線も併設されていましたが、主要な利用目的であった石炭輸送の終了後は使われなくなり、放置された状態が続いていたといいます。駅舎は温かみのある木造建築で、ホームとの間は通路と構内踏切で結ばれていました。業務は外部に委託された簡易委託駅でした。

駅周辺

駅の周辺には、かつてこの地域の基幹産業を支えた旧三井鉱山漆生炭鉱がありました。また、主要な道路である国道211号線が付近を通っています。

隣の駅

日本国有鉄道 漆生線
鴨生駅 - 漆生駅 - 才田駅

日本国有鉄道 漆生線貨物支線（1968年廃止）
漆生駅 - （貨）稲築駅

この駅は、筑豊地方の炭鉱隆盛期に開業し、地域の産業と人々の暮らしを支えましたが、エネルギー政策の転換と共にその役目を終え、現在では廃線跡として静かにその歴史を伝えています。

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