漏洩電磁波

漏洩電磁波とは

漏洩電磁波とは、電子機器の内部で発生した電磁波が、機器外部へ漏れ出す現象を指します。これは、電磁波の遮蔽が完全でないことや、機器の設計上の問題により発生します。漏洩電磁波は、意図せず情報が外部に漏洩する原因となるため、セキュリティ上の大きな脅威となります。

漏洩電磁波のリスク

漏洩電磁波は、単に電磁波が漏れるというだけでなく、その中に情報が含まれていることが問題です。例えば、パソコンのモニターやキーボード、ネットワークケーブルなどから放射される微弱な電磁波には、画面に表示されている内容やキー入力などの情報が含まれている可能性があります。これらの情報を傍受されることで、機密情報や個人情報が盗み取られる危険性があります。

特に、漏洩電磁波を利用した攻撃はサイドチャネル攻撃と呼ばれ、暗号化された情報も解読される可能性があります。そのため、漏洩電磁波対策は、情報セキュリティにおいて非常に重要な要素となっています。

漏洩電磁波の傍受

漏洩電磁波は、特別な装置を使用することで、数十メートル離れた場所からでも傍受することが可能です。指向性アンテナなどを使用すれば、特定の電子機器からの信号を選択的に傍受することもできます。

2004年の実験では、市販の受信機を使用して、デスクトップPCの映像が傍受できることが確認されました。また、ノートパソコンでも、本格的な機器を使用すれば映像の傍受が可能であることも示されています。これは、日常的に使用している機器でも、情報漏洩のリスクがあることを示唆しています。

パラボラアンテナなどのアンテナを使用する場合も、メインの電波の他にサイドローブと呼ばれる不要な放射があり、ここから情報が漏洩する危険性もあります。

漏洩電磁波の対策

漏洩電磁波への対策は、大きく分けて、電子機器の設計段階での対策と、使用環境での対策があります。

電子機器の設計段階での対策

電磁シールド: 機器の回路やケーブルを電磁波を通しにくい素材で覆うことで、電磁波の漏洩を抑制します。
光ケーブル: 従来の電気信号を伝送するケーブルの代わりに、光ケーブルを使用することで、電磁波の発生を抑制します。
フィルター: 電源ラインなどにフィルターを設置することで、電磁波の漏洩を抑制します。
雑音信号の付加: 筐体やケーブルにランダムな雑音信号を流すことで、漏洩電磁波から情報を解読することを困難にします。

使用環境での対策

部屋全体のシールド: パソコンなどの電子機器が設置されている部屋全体を電磁波シールドで覆うことで、外部への漏洩を抑制します。
電波暗室: 周囲の電波の影響を遮断するために、電波暗室を利用することも有効です。

アンテナの対策

秘匿性の高い通信方式: 電波による信号伝達方式自体を秘匿性の高いものにする（例：スペクトル拡散通信）。
光回線への切り替え: 可能であれば、光回線に切り替えることで、電波による情報漏洩のリスクを低減します。

漏洩電磁波に関するエピソード

スパイキャッチャー: イギリスのMI5は、ソ連大使館の受信機から漏洩する電磁波を監視し、受信機の電源オン・オフから情報活動を推測したという実話があります。
アイビー・ベルズ作戦: アメリカの潜水艦が、ソ連の海底ケーブルの漏洩電磁波を傍受し、ソ連の通信を傍受したという実話もあります。

漏洩電磁波を題材としたフィクション

漏洩電磁波は、フィクション作品でも度々題材として登場します。

『アキハバラ@DEEP』
『マーケット 〜株〜』(漫画)
『死都日本』
『ZERO』

これらの作品では、漏洩電磁波が情報漏洩やスパイ活動に利用される様子が描かれています。

まとめ

漏洩電磁波は、電子機器から意図せず漏れ出す電磁波であり、情報漏洩のリスクを孕むものです。その対策は、電子機器の設計段階から使用環境まで、多岐にわたります。情報セキュリティを確保するためには、漏洩電磁波に対する正しい知識と対策が不可欠です。

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