演歌師

演歌師について

演歌師（えんかし）は、日本の明治末期から昭和にかけて演歌を専門に歌っていた芸人のことを指します。その活動は従来の大道芸に由来し、流し歩きながら歌い、その歌詞を書き付けた歌本を販売するスタイルが一般的でした。しかし、その後、座敷や寄席などでのパフォーマンスが加わり、より多様な形態で歌が披露されるようになりました。

音楽スタイルと使用楽器

演歌師の演奏には、主にバイオリンやアコーディオンが伴奏楽器として用いられ、演歌師自身がこれらの楽器を演奏しながら歌うスタイルが一般的でした。こういった形態の特徴として、演歌のメロディとリズムの渋さ、そしてそれに伴う歌詞の表現が挙げられます。また、第二次世界大戦後になると、演歌師は流しの形態として認識されることが多くなり、伴奏楽器にはギターが用いられることが増えました。この変化は、演歌のスタイルにも影響を与え、様々なアーティストが新たな表現を模索するようになりました。

著名な演歌師たち

演歌師の中には多くの著名な人物がおり、彼らの爪跡は日本の音楽文化に深く残っています。例えば、添田唖蝉坊（1872年 - 1944年）や塩原秩峰（1880年 - 1937年）、東一声（1886年 - 1950年）などが名を馳せました。また、神長瞭月（1888年 - 1976年）は演歌にバイオリンを初めて取り入れたことで知られています。彼の影響は後の演歌に大きな影響を与えました。

宮島郁芳（1894年 - 1972年）は「金色夜叉」や「馬賊の歌」などの代表作を持ち、鳥取春陽（1900年 - 1932年）や石田一松（1902年 - 1956年）、添田知道（1902年 - 1980年）なども、多くのファンに愛されました。特に添田知道は父の影響を受け、その後、芸名を「添田さつき」として活動しました。桜井敏雄（1909年 - 1996年）は「最後の演歌師」と称され、その活躍が特に印象深いです。

現在も演歌の伝統を受け継ぐ者たちがいます。なぎら健壱は晩年の桜井敏雄から教えを受け、彼のレパートリーを継承する努力を続けていますが、演歌師の演奏形態や風俗の復元にはこだわりを持たない姿勢を見せています。ほかにも、打楽器奏者の土取利行は三味線伴奏によって添田父子の作品の継承に取り組み、声優の片岡一郎は伝統的な芸とヴァイオリン演歌の伝承に尽力しています。

演歌師とその影響

演歌師の影響は多方面に及び、上原げんとは作曲家として知られる一方、無名時代には演歌師としての活動も行っていました。また、志摩八郎や辰巳柳子は演歌師のスタイルを取り入れた音曲漫才で名を馳せました。さらに、北島三郎や渥美二郎など、多くの演歌歌手が演歌師としてのキャリアを経てメジャーとなりました。

このように、演歌師は日本の音楽の歴史において重要な存在であり、その文化は今なお受け継がれています。

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