漢城条約

漢城条約について

漢城条約（かんじょうじょうやく）は、1885年1月9日に日本と李氏朝鮮（現在の韓国）との間で締結された歴史的な条約です。朝鮮の首都である漢城、現代のソウル特別市で結ばれたこの条約は、甲申政変後の日朝間の和平を目指して成立しました。日本側の全権大使は井上馨、朝鮮側の全権大臣は金弘集が担当しました。

条約締結までの経緯

この条約が結ばれる背景には、甲申政変が大きく影響しています。甲申政変は、独立党によるクーデタであり、日本の公使がこの事件に深く関与したとされています。この政変の失敗により、日本の駐漢公使である竹添進一郎は、日本人の安全確保のため、幹部と在留邦人を仁川に避難させました。また、朝鮮政府に対して清国軍および朝鮮民衆による暴力行為の抗議を申し入れました。これにより、日本側と朝鮮側の間には大きな緊張が生まれることとなります。

朝鮮側は、日本の行動が独立党の活動に加担しているとの疑念を持ち、日本公使が通達なしに王宮に侵入したことを強く非難しました。竹添公使は、国王からの要請に基づく行動であると主張し、双方の認識の相違は大きな問題を引き起こしました。しかし、朝鮮政府が疑っていた親筆書の真偽について両国で意見が対立する中、井上馨が全権大使として派遣され、事態の収束を図ることが期待されました。

日本国内では、公使や日本軍がクーデタには加担していないとの立場が強調され、清国の襲撃や居留民の被害についてだけが報道されることにより、対清国への強硬姿勢が広がっていきました。特に、自由党の機関紙は清国への報復を訴える内容が目立ち、それが国民的な対立意識を高める要因となったのです。

井上馨による条約交渉

井上馨は、日朝関係の早急な修復を重視し、双方の主張を棚上げにして交渉を進めました。彼は、朝鮮国内における日本人被害や公使館の焼失という具体的な事実に焦点を当て、条約締結に向けた交渉を進めました。この過程には、井上全権大使と金弘集全権大臣の他にも、多くの外務や政治の専門家が参加しました。

1885年1月9日、双方が合意に至り、漢城条約が誕生しました。内容には、朝鮮の謝罪、日本人の死傷者への補償金、さらに日本公使館の再建に関する合意が含まれていました。この交渉過程に於いても、清国からの圧力が無視できない状況でありながら、井上と金は日朝問題を清国が干渉することを拒絶しました。

条約の具体的内容

漢城条約の主な内容は以下の通りです。
1. 謝罪: 朝鮮国は日本に対して公式に謝罪を表明します。
2. 補償金: 日本国民の被害者遺族及び負傷者に対し、朝鮮は11万円の補償金を支給します。
3. 犯罪者の逮捕: 日本人を殺害した犯人を30日以内に逮捕し、適切に処罰すると約束されました。
4. 公使館の再建: 朝鮮は新たに土地と建物を提供し、再建費用として2万円を支給します。
5. 兵營の設置: 公使館の護衛兵用の兵営の建設と修繕は、朝鮮国が施行することと再確認されました。

漢城条約の締結は、日本と朝鮮の関係に新たな局面をもたらし、後の歴史にも重要な影響を与えることとなりました。

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