潜水艦推力増強計画

潜水艦推力増強計画（GUPPY）とは

潜水艦推力増強計画(Greater Underwater Propulsion Power Program)は、第二次世界大戦終結後、アメリカ海軍が実施した潜水艦の近代化を目的とした一連の改装計画です。計画名は、頭文字をとって「GUPPY（ガピー）」と呼ばれました。（Yは発音を容易にするために付加されました。）

この計画は、アメリカ海軍が鹵獲したドイツのUボートXXI型であるU-2513とU-3008を詳細に分析したことから始まりました。分析の結果、

バッテリーの容量強化
船体構造の合理化
シュノーケルの増設
火器管制システムの改良

という4つの主要な改良点が特定されました。当初、海軍はこれらの知見を基に新型潜水艦の設計を検討しましたが、艦船局は既存のガトー級、バラオ級、テンチ級潜水艦に対する改良がより現実的であると判断しました。1946年6月、海軍作戦部長のチェスター・ニミッツ元帥がGUPPYプロジェクトを正式に承認し、計画が本格的に始動しました。

GUPPYの主な改修計画

最初の2隻、オダックス (USS Odax, SS-484) とポモドン (USS Pomodon, SS-486) がポーツマス海軍造船所にて試験的に改修されました。その後、いくつかの改修計画が連続して実施されました。主な改修計画は以下の7種類です。

1. GUPPY I
2. GUPPY II
3. GUPPY IA
4. フリート・シュノーケル
5. GUPPY IIA
6. GUPPY IB
7. GUPPY III

初期に改修された艦艇は、その後のより高度な計画で再度改修されることもありました。

GUPPY I

最初のGUPPY改修は1947年にオダックスとポモドンに対して実施されました。両艦はテンチ級潜水艦であり、ポーツマス海軍造船所で建造されました。外観上の変更点としては、司令塔、構造物、潜望鏡、レーダーマストの流線型化が挙げられます。水中抵抗を減らすため、潜望鏡は1基が撤去されました。シュノーケルは当時の技術では装備が困難であったため、取り付けられませんでした。艦砲および関連するコンテナも撤去されています。SV対空レーダーがセイル上部に追加され、特徴的な横方向の膨らみを形成しました。キャプスタン、クリート、レール支柱などの支持架は再設計され、撤去されるか、潜水時に格納されるように変更されました。鋭いV字型の艦首（フリート・ボート・バウ）は、水中性能を向上させる円形の「グッピー・バウ」に交換されました。

これらの改修に伴い、艦の各部の名称も変更されました。GUPPY改修後、司令塔およびマスト・サポート周辺の構造は「セイル」と呼ばれるようになりました。

艦内部では、出力と容量が大幅に増加した新型バッテリーを搭載するため、大規模な再配置が行われました。バッテリーは新設計のものが採用され、旧式のサーゴ級で使用されていたものと比較して、より多くの薄型プレートが使用され、高電圧をより長時間維持することができました。しかし、これらのバッテリーの寿命はわずか18ヶ月であり、充電にも長い時間を要しました。さらに、発生する水素ガスの換気が必要であり、バッテリーの端子と終端抵抗は冷却水で冷却する必要がありました。126個のセルで構成される4つのバッテリーは、貯蔵庫、弾薬庫、冷却庫の代わりに設置されたバッテリー室に収納されました。これらのバッテリーは直列または並列に接続され、広範囲の電圧を供給し、低速から高速までの幅広い速度を提供しました。

動力室では、2基から4基の高速モーターと減速ギアが低速モーターに置き換えられました。開放型の正面配電盤は、耐水キャビネット式のものに交換されました。照明やその他の電気設備は、120ボルト60ヘルツの交流から120ボルト400ヘルツの交流に変更されました。処理能力が大幅に向上した新型空調設備も増設されました。

実戦配備後、これらの艦艇は水中性能が大幅に向上しました。ポモドンは水上で17.8ノット、水中では18.2ノットの最高速度を記録しました。オダックスはこれにわずかに劣る性能でした。

GUPPY II

GUPPY II改修（計画番号SCB 47）は、1947年から1951年にかけて実施されました。改修内容はGUPPY Iとほぼ同様でしたが、新型の潜望鏡とシュノーケルが導入されました。3本の新しいマスト（吸気シュノーケル、排気シュノーケル、ESMマスト）が追加され、セイル上部の拡張が必要となりました。艦船局は2つの異なるセイル設計を承認しました。

エレクトリック・ボート・セイル：後縁が直線で円形の窓、広いトップと丸みを帯びた前縁を持つ。
ポーツマス・セイル：薄いトップと湾曲した後縁、正方形の窓と鋭く低い前縁を持つ。

ポーツマス・セイルは、転換計画が実施されたすべての艦に採用されました。

ポーツマス・セイルを装備した一部の艦にはSV対空レーダーが装備され、収納室の装備が必要となりました。そのため、セイルのトップ部分に膨らみが形成されました。後の改修では、より小型のSSまたはSS2対空レーダーが採用され、アンテナのみがマストに収容できるようになりました。また、GUPPY IIおよびGUPPY III改修艦の一部は、セイルが水線上よりも高く拡張されました。これらは「ノーザン・セイル」と呼ばれ、悪天候下での有人活動を可能にしました。

GUPPY II改修が行われたすべての艦は、高速モーターと減速ギアが低速ダイレクトドライブモーターに交換されました。このモーターは、1軸あたり2,500馬力 (1.9 MW) を発揮しました。

GUPPY I改修艦であったオダックスとポモドンも、後にGUPPY II改修を受けました。

GUPPY IA

艦船局は、GUPPY II改修のコスト削減版として、1951年にGUPPY IA改修（計画番号SCB 47A）を考案しました。GUPPY IA改修はGUPPY II改修の大部分を含んでいましたが、4つの新型バッテリーの装備とそれに伴う艦内配置の変更が省略されました。代わりに、GUPPY IA改修ではオリジナルのサーゴ・バッテリーよりも強力なサーゴIIバッテリーが採用されました。これらのバッテリーでは、電解質の換気、バッテリーの冷却、タンクの換気が行われました。さらに、その寿命はサーゴ・バッテリーよりは短いものの、グッピー・バッテリーよりも長寿命でした。ソナー室は魚雷室前方から厨房の下に変更されました。GUPPY II改修と比較して、GUPPY IA改修は水中での性能を犠牲にして、低コスト、居住性の向上、およびメンテナンス性の向上に重点が置かれました。

フリート・シュノーケル・プログラム

海軍は、希望するすべての艦艇をGUPPY改修するための予算が承認されないことを認識し、艦隊に配備する艦艇に必要最小限の修正を加えるため、フリート・シュノーケル・プログラム（計画番号SCB 47B）を考案しました。このプログラムには、シュノーケルの装着、セイルの合理化、高度な能力を持つ空調システム、高出力化された電気システムの装備が含まれていました。甲板上の砲および補助ディーゼル機関は撤去されました。GUPPY改修とは異なり、フリート・シュノーケル・プログラムでは、元のデッキ構造、艦首部分、およびバッテリーが維持されました。フリート・シュノーケル改修艦はGUPPY改修艦に能力的に劣りましたが、能力的な制限にもかかわらず、GUPPY改修艦と同様の期間、任務に貢献しました。パイパー、シー・オウル、スターレットの3隻には、大型のBQR-4Aバウソナーが装着されました。

GUPPY IIA

GUPPY IA計画は、ほとんど同じ内容のGUPPY IIA計画（計画番号SCB 47C）に引き継がれ、1952年から1954年まで実施されました。

GUPPY IB

GUPPY IB改修は、外国海軍へ貸与される4隻に対して非公式に行われた限定的な改修および近代化でした。これらの艦はシュノーケルが装備され、新型のソナーおよび火器管制システムを装備していました。ESMを装備しない点を除いては、GUPPY IA改修とほとんど同様でした。イタリア海軍に貸与された2隻は、ガトー級が改修されたものでした。

GUPPY III

GUPPY III改修は、GUPPY II改修艦に対して行われた最終的な近代化改修であり、水中での探知能力と攻撃能力の向上を目的としていました。

まとめ

GUPPY計画は、第二次世界大戦後のアメリカ海軍における潜水艦戦術と技術の進化に大きく貢献しました。これらの改修によって、旧式の潜水艦が近代的な戦力として生まれ変わり、冷戦期の海軍戦略において重要な役割を果たしました。

http://guppysubmarinetribute.homestead.com/Tribute.html

もう一度検索