潜行掘鑿器

潜行掘鑿器（せんこうくっさくき）

潜行掘鑿器は、大日本帝国陸軍が開発した特殊な工兵車両であり、一般には「SK器」とも称されています。この車両の主な目的は、トーチカなどの敵陣地を秘密裏に攻略することであり、敵に発見されることなく接近できるように設計されています。

車両の設計と機能

潜行掘鑿器の最大の特徴は、その独自の設計にあります。車体の下部を地中に潜行させながら進むことができ、この方式によって地表からの視線をかわすことが可能です。また、車体の前面には微振動を与えることができる鋤が取り付けられており、この鋤を使用して土を掘り進めることができます。鋤は角度を調整できるため、目的に応じた掘鑿が行え、掘る深さや進行方向も自在に変更できます。

さらに、鋤には掘り進む際の深度を一定に保つための案内ローラーが装備されています。この車両が掘削する壕は、車体の大部分を隠すことができる深さであり、約1メートルに達することが可能です。土を押しのけて形成される土の盛り上がりと合せて、十分な隠蔽効果を持っています。

走行装置と特性

潜行掘鑿器には装軌式の走行装置が採用されており、後輪を起動輪として使用しています。履帯には掘鑿に必要な付着力を強化するために防滑具が取り付けられており、土を滑らかに進むことができるように工夫されています。さらに、土の抵抗を少なくするため、車体幅は1.8メートルに限られています。このサイズが、狭い場所でも機動性を保つ鍵となっています。

開発と試験

この車両は、1934年に最初の試作が行われ、1936年2月には八柱演習場において掘鑿に関する基礎試験が行われました。その後、掘削手段を改善するためのさらなる研究が続けられ、新たにカッター円板を用いた坑道掘進機（試IC-2号機）も試作されることとなりました。また、1940年代には第4陸軍技術研究所において、回転歯を導入した同様の車両である潜行掘鑿車の研究が行われたと伝えられています。

さらに、車体前面に突角状の堀開具を搭載し、散兵壕の構築に用いる試製堀進車も存在していました。その呼称は「潜行作業機」とされ、1938年度の北満冬季試験でのテストが行われたものの、こちらも試作にとどまっていることがわかります。

参考文献と関連項目

このように、潜行掘鑿器は秘密裏に敵陣地に接近するための特殊な車両として、大日本帝国陸軍において開発が進められた重要な機器でした。詳細な情報は原乙未生、栄森伝治『日本の戦車〈下巻〉』や桜井英樹『もしも☆WEAPON 完全版 世界の試作・計画兵器』に記されています。関連項目には、大日本帝国陸軍の兵器一覧や他の特殊車両が挙げられます。

このような工兵車両の試作は、戦争の戦術や技術の進展を見せる一例と言えるでしょう。

もう一度検索