瀬川菊之丞 (7代目)

七代目瀬川菊之丞は、1957年生まれの歌舞伎役者です。屋号は濱村屋、定紋は丸に結綿、本名は外村実です。大阪府出身で、幼少期に滋賀県へ移住。彦根工業高校卒業後はトヨタ自動車で社会人野球選手として活躍していましたが、負傷を機に退社。その後、劇団前進座付属養成所に学び、俳優の道を歩み始めます。

当初は山村邦次郎として活動し、五代目河原崎國太郎に師事。女形と立役の両方を学びました。六代目嵐芳三郎の死去をきっかけに本格的に女形に取り組み、六代目河原崎國太郎の指導の下、立役も磨いていきます。女形では、奥ゆかしくも深みのある演技が持ち味で、立役では『三人吉三』のお坊吉三などが当たり役として知られています。

1985年には『巷談小夜きぬた』で文化庁芸術祭賞を、1996年には『左の腕』で京都十三夜会賞を受賞するなど、高い評価を得ています。2001年には、六代目瀬川菊之丞の遺志を継ぎ、五代目岩井紫若の推薦によって七代目瀬川菊之丞を襲名しました。襲名披露公演は『菅原伝授手習鑑（寺子屋）』の千代役でした。

2009年に前進座を退団後は、フリーランスとして活動の幅を広げ、数々の映像作品や舞台に出演。テレビドラマでは『水戸黄門』、『土曜時代劇』、『JIN-仁-』などの人気作品に出演し、存在感を示しました。映画では『日本のいちばん長い夏』、『武士の家計簿』などに出演し、幅広い役柄を演じ分けています。

舞台においても、前進座公演をはじめ、松平健、氷川きよし、島津亜矢、五木ひろしなど、多くの著名な俳優や歌手と共演。時代劇から現代劇まで、多彩な作品に携わり、その演技力は高く評価されています。近年では、『東海道四谷怪談』などの古典作品にも出演し、ベテラン俳優としての貫禄を見せつけています。

七代目瀬川菊之丞は、歌舞伎の伝統を守りながら、現代の舞台にも柔軟に対応できる稀有な存在です。その確かな演技力と幅広い役柄への対応力は、多くの観客を魅了し続けています。50年を超える芸能生活で培われた経験と技量は、後進の俳優たちにとっても大きな影響を与え続けていると言えるでしょう。これからも、彼の活躍から目が離せません。

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