瀬戸内シージャック事件

瀬戸内シージャック事件：戦後初の狙撃事件の全容

1970年5月12日、瀬戸内海で発生した「瀬戸内シージャック事件」は、一人の男による旅客船乗っ取りという衝撃的な事件でした。人質を救出するために警察官が犯人を狙撃するという、当時としては異例の解決方法が取られたことで、社会に大きな波紋を広げました。

事件発生の背景

事件の主犯である川藤展久は、仲間と共に盗難車で広島へ向かう途中、警察の検問で逮捕されます。しかし、護送中に猟銃を奪い警察官を負傷させ逃走。その後、広島市内で銃砲店を襲撃し、ライフル銃などを強奪。宇品港から愛媛県今治市へ向かう旅客船「ぷりんす号」を乗っ取り、乗員乗客を人質にとるという暴挙に出ました。

ぷりんす号、瀬戸内海を逃走

川藤は「ぷりんす号」を乗っ取り、瀬戸内海を逃走。その間、警備艇を銃撃し警察官に重傷を負わせたり、一般人を狙撃するなど、無差別な行為を繰り返しました。広島県警は警察官を大量動員し、海上保安庁や海上自衛隊の協力も得て追跡。各報道機関もヘリコプターを投入し、現場の様子を生中継するなど、前代未聞の報道合戦が繰り広げられました。

松山入港、そして宇品へ

「ぷりんす号」は松山観光港に入港。川藤は乗客を解放する代わりに、新たな船か燃料を要求します。要求通り給油は行われましたが、乗員は解放されず、再び出航。来島海峡へ向かった後、宇品港へ戻ります。川藤は逮捕された仲間の解放を要求しますが、交渉は決裂。再び銃を乱射し、警察官に重傷を負わせるなど、状況は悪化の一途を辿りました。

狙撃、そして死

これ以上の被害を食い止めるため、広島県警本部長は緊急避難措置として川藤の射殺を許可。川藤が武器を持たずに甲板へ出てきたところを、大阪府警察の狙撃手が狙撃。川藤は病院へ搬送されるも、死亡が確認されました。この瞬間はテレビで生中継され、日本中を震撼させました。

事件が社会に与えた影響

本事件は、戦後初となる犯人狙撃による人質救出という形で解決しましたが、その是非を巡り大きな議論を呼びました。警察の措置は正当防衛として不起訴となりましたが、世論は賛否両論に分かれました。また、本事件をきっかけに銃刀法が改正され、銃器所持の規制が強化されました。

現代に残る教訓

瀬戸内シージャック事件は、人質事件における警察の対応、報道のあり方、そして社会の倫理観など、様々な問題を提起しました。事件から半世紀以上が経過した現在でも、その教訓は色褪せることなく、私たちに問いかけ続けています。

映像化・書籍化

本事件は、映画『冒険者たち』や『凶弾』、テレビ番組『奇跡体験!アンビリバボー』などで映像化されています。また、福田洋によるドキュメンタリー小説『凶弾－瀬戸内シージャック事件』は、江戸川乱歩賞の候補作となるなど、高い評価を得ています。

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