瀬野修

瀬野修（せの おさむ、1908年 - 1995年）は、激動の昭和を生きた人物であり、教師、兵士、歌人、作家という多様な顔を持っていました。彼の人生は、戦争という時代の大きなうねりに翻弄されながらも、人間の尊厳と希望を失わなかった姿を映し出しています。

京都府舞鶴市に生まれた瀬野は、旧制舞鶴中学校の教師として教鞭を執っていました。しかし、太平洋戦争が勃発すると、彼は兵士として戦地に赴き、択捉島に出征します。終戦後、彼はソ連に抑留され、過酷なシベリアでの生活を強いられます。

絶望的な状況下で、瀬野はシラカバの木の皮を紙に、ガラスを研いで作ったペンに、煙突のすすをインク代わりにして和歌を書き続けました。収容所を転々としながら、全200首から300首に及ぶ歌を書き綴ったといわれています。これらの歌は、『白樺日誌』としてまとめられ、彼の心の支えとなりました。

1947年、瀬野は日本に帰還を果たし、祖国の土を踏みます。彼は抑留中に書きためた『白樺日誌』を持ち帰り、1988年に舞鶴引揚記念館に寄贈しました。この『白樺日誌』は、シベリア抑留という過酷な体験を記録した貴重な資料として、後世にその名を残すことになります。

帰国後、瀬野は作家として活動し、『シベリヤ抑留記』などの著書を出版しました。これらの作品を通して、彼は戦争の悲惨さや抑留生活の苦難を伝え、平和への願いを訴え続けました。

1995年、瀬野修は87歳で生涯を閉じました。彼の人生は、戦争という時代の犠牲者であると同時に、人間の精神の強さを示すものでもありました。シベリアの地で生まれた『白樺日誌』は、ユネスコ世界記憶遺産にも登録され、彼の残したメッセージは、今もなお多くの人々の心に響いています。

著書

『シベリヤ抑留記』虹有社 1947年
『シベリヤ抑留記』大空社 1999年（復刻）
* 『白樺日誌 : ユネスコ世界記憶遺産登録 : 改訂版図録』舞鶴・引揚語りの会、舞鶴引揚記念館 2016年

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