火をみた女

テレビドラマ『火をみた女』

『火をみた女』（ひをみたおんな）は、日本のテレビドラマ作品です。1975年2月20日から同年3月27日にかけて、TBS系列にて毎週木曜日の夜9時枠で放送されました。

概要

本作の物語は、ある火山学者が謎の死を遂げたことから幕を開けます。この不可解な事件をきっかけに、残された人々、特に男女間で渦巻く複雑な感情や激しい愛憎が克明に描かれていきます。物語はサスペンスの要素を含みつつも、その根幹には人間関係の葛藤や情感的なドラマが深く流れるメロドラマとして構成されています。死の真相を追う展開と、登場人物たちが織りなす愛と憎しみのドラマが絡み合いながら進行します。

放送枠に関する背景

『火をみた女』が放送されたTBS系列の木曜夜9時枠は、本作の開始時点で大きな変化を遂げていました。長らくこの時間帯の番組制作は、JNN系列の準キー局であった関西の朝日放送（ABC）が担当していました。しかし、直前に放送されていたABC制作のドラマが視聴率の低迷などにより打ち切りとなり、さらに当時のテレビネットワークにおけるいわゆる「腸捻転」の解消、すなわち朝日放送がNETテレビ（現在のテレビ朝日）系列へとネットチェンジすることが決定していたため、この制作枠はTBS本体に返上されることになったのです。

『火をみた女』は、このような歴史的な経緯を経て、TBSが再び自社で制作を開始した木曜夜9時枠の最初のドラマとして位置づけられます。当時の放送局間の複雑な系列関係の変化を示す一例としても語られる作品です。

原作

このドラマの原作は、作家・有馬頼義の小説「火と風の論告」です。ドラマ化にあたり、原作の世界観や登場人物、テーマを基盤としつつ、テレビドラマとしての表現や構成にアレンジが加えられています。

出演者

本作には、実力と人気を兼ね備えた俳優陣が出演し、ドラマに深みを与えました。主なキャストは以下の通りです。

八穂子：岩下志麻
早坂教授：三國連太郎
堂前：田村亮
生田：長塚京三

その他にも、桃井かおり、馬淵晴子といった面々が顔を揃え、物語を彩っています。特に主演の岩下志麻をはじめ、三國連太郎、長塚京三らが、登場人物たちの内面を巧みに演じ切っています。

スタッフ

* 脚本：尾中洋一

脚本を担当したのは尾中洋一氏です。原作の世界観をテレビドラマの形式に落とし込み、登場人物たちの感情や展開を構築しました。

作品の特徴と位置づけ

『火をみた女』は、1970年代のテレビドラマの一潮流であった、サスペンスと濃厚な人間ドラマ、特に愛憎劇を結びつけた作品です。実力派キャストによる演技合戦が見どころであり、視聴者を引きつける要素となりました。また、前述したように、放送枠の変遷という当時のテレビ業界における特異な状況の中で制作された作品である点も、記憶されるべきポイントです。火山学者の死という衝撃的な事件を入り口としながら、その本質は人間の情念に迫るドラマとして、当時の視聴者に強い印象を残しました。

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