火傷病

火傷病（Fire Blight）とは

火傷病は、リンゴ、ナシ、マルメロといった果樹や、サンザシ、コトネアスター、ナナカマドなどのバラ科植物に発生する伝染病です。病原菌は Erwinia amylovora というグラム陰性細菌で、感染すると植物がまるで火で焼かれたかのように黒変し、枯死してしまうため、この名が付けられました。

概要

火傷病は、北米東部が起源とされていますが、現在ではオーストラリアを除く世界中で発生が確認されています。特にナシは感染しやすく、リンゴ、マルメロなども被害を受けやすいとされています。

感染は、主に春の開花期に、細菌が開いた花や芽、葉から侵入することで起こります。ミツバチなどの昆虫や、鳥、雨、風などが細菌を媒介し、広範囲に感染が拡大する可能性があります。また、吸汁性昆虫や葉食昆虫による傷口からも感染することがあります。嵐のような激しい風雨によって、果樹園全体があっという間に感染してしまう事例も報告されています。

高温多湿な環境は病気の進行を早めますが、冬季の低温下では細菌の活動が鈍くなり、感染の進行は緩やかになります。感染した部位からは細菌粘液が大量に染み出し、これが新たな感染源となります。

日本における火傷病

日本では、Erwinia amylovora による「ナシ枝枯細菌病」が発生していますが、日本政府は「ナシ枝枯細菌病菌はリンゴに病原性を持たない」として、火傷病との違いを主張しています。しかし、ナシ枝枯細菌病の病原細菌は Erwinia amylovora の biovar4 であるという説も提唱されています。

同種の菌による病害発生が問題視される中、枝枯細菌病について報告した研究者が農林水産省から厳しい扱いを受け、自ら命を絶ってしまったという悲しい出来事もありました。

対策

火傷病は、発生すると甚大な被害をもたらす可能性があるため、早期発見と適切な対策が重要です。感染が疑われる場合は、速やかに専門機関に相談し、適切な防除対策を講じる必要があります。

参考文献

Joel L. Vanneste (Ruakura Research Centre, New Zealand), Fire Blight: The Disease and Its Causative Agent, Erwinia Amylovora, CABI Publishing, Aug 2000, ISBN 0851992943, [1]（英語）
Clay S. Griffith, Fire Blight: The Foundation of Phytobacteriology, American Phytopathological Society, Jul 2003, ISBN 0890543097（英語）

関連項目

エルウィニア属

外部リンク

火傷病防疫指針（農林水産省）
* APSnet Education Center (Plant Pathology / Disease Online) - Plant Disease Lessons - Fire blight of Apple and Pear（英語）

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