火星衛星探査計画

火星衛星探査計画（MMX）

火星衛星探査計画（Martian Moons eXploration、略称MMX）は、宇宙航空研究開発機構（JAXA）の主導の下、国際的な共同で進められている深宇宙探査計画です。このミッションの主な目的は、火星の衛星であるフォボスとダイモスの観測、特にフォボスからのサンプルリターンを行うことにあります。2026年度の打ち上げを計画し、使用するロケットはH3ロケットです。総開発費は約464億円と見積もられています。

ミッションの概要とスケジュール

当初の計画では、2024年9月に打ち上げが行われ、2025年8月に火星の周回軌道に投入、そして2029年9月に地球に帰還する予定でした。しかし、H3ロケットのスケジュール遅延やその他の要因により、このミッションの打ち上げが2026年度に延期されました。

探査機は火星周回軌道に入った後、フォボスの周回に移動し、そこでリモートセンシングによる観測を実施します。その後は、探査機の脚を利用して1回または2回フォボスに着陸し、表面の砂（レゴリス）を採取する計画です。目標は、一度のサンプリングで10g以上のサンプルを取得することで、これはロボットアームやコアラー機構を組み合わせたシステムによって実現されます。また、ガスを使用したニューマティックサンプラーも搭載されており、サンプルの取得が可能になります。サンプルを地球に持ち帰る前に、ダイモスのフライバイ観測も計画されており、複数の科学的なデータ収集を目指しています。

I体験的な目的　ー 科学・工学の視点

このミッションには、科学的な目的と工学的な側面があります。科学的な目的としては、火星の衛星フォボスとダイモスがどのように形成されたのかを解明することが挙げられます。具体的には、フォボスが小惑星によって捕獲された結果なのか、巨大衝突による破片の集まりなのかを明らかにすることが最大の目標です。これにより、火星及び地球型惑星の形成過程について新たな理解が得られることを期待しています。

また、火星の気候変遷や表層の進化に関する新しい知見を得ることも目的としています。これにより、火星の初期進化過程や大気物質循環のメカニズムに関する理解が深まるでしょう。

一方、工学的な面では、火星衛星への往還技術やサンプリング技術を確立することが重要な目的となっています。特に、火星の衛星表面への到達技術や高度なサンプリング手法は、今後の宇宙探査における基盤技術として期待されます。

国際協力と技術開発

MMXプロジェクトは、日本単独ではなく、アメリカのNASA、ドイツのDLR、フランスのCNES、欧州宇宙機関（ESA）などが国際的に協力して進めています。NASAからはMEGANEというガンマ線・中性子分光計が提供され、CNESとDLRは、小型ローバーを開発し、探査機に搭載します。このローバーは、火星衛星表面に着陸し、そのレゴリスの組成を分析する役割を果たします。

その他のトピックス

映画「名探偵コナン ゼロの執行人」でも、MMXに似た無人探査機が登場します。また、2025年に予定されている日本国際博覧会では、MMXが撮影した映像を生中継する構想もあったが、打ち上げ延期により実現しなかったことも付記しておきます。

本計画は、宇宙探査に新たな道を開く可能性を秘めており、火星を含む太陽系の理解を深めるための期待が寄せられています。

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