火薬事件

火薬事件とは

火薬事件（かやくじけん、英: Gunpowder Incident）は、アメリカ独立戦争の初期に発生した重要な出来事で、1775年4月20日にバージニア植民地で起きた。事件は、当時のバージニア植民地総督ダンモア卿ジョン・マーレイが、愛国者を率いるパトリック・ヘンリーの民兵隊との間で発生した衝突に関連している。この日、アメリカ独立戦争の始まりを告げたレキシントン・コンコードの戦いの直後で、バージニアにはまだその情報は届いていなかった。

背景

1774年、イギリス議会が施行した「耐え難き諸法」により、北アメリカの植民地では武力衝突のリスクが高まりつつあった。特に、ボストン茶会事件を契機に、植民地側は団結を強化し、1774年9月には第一次大陸会議を設立した。ここで、マサチューセッツ湾植民地の火薬警鐘と呼ばれる民兵蜂起の知らせが届き、地域の民兵が集結する事態が起こった。これを受けて、大陸会議は各植民地での民兵隊の編成を求めた。

1775年に入ると、バージニアの人々は民兵隊を組織し、武装のために軍需物資を求めて回っていた。総督のダンモアは政情の不安を見て、民兵隊から軍需物資を奪取する計画を立てた。3月23日、パトリック・ヘンリーが「私に自由を、然らずんば死を」との演説を行った際、ダンモアは火薬庫の火薬を移動させる必要があると考えた。

火薬の除去

4月19日、ダンモアは秘密裏にイギリス海兵隊をウィリアムズバーグに送り込み、火薬庫から火薬を取り出す命令を下した。4月20日夜、イギリス海兵隊が15樽半の火薬を積み込み始めたところ、町の住民によって発覚し、民兵隊が集結する事態に発展した。ダンモアは民衆の反発を警戒し、彼の従僕たちに武装を命じたが、愛国的な指導者たちが冷静に対応することで暴動を防ぐことができた。

ダンモアは、火薬を必要とした理由として奴隷蜂起を警戒したと主張したが、彼の行動は植民地民の反感を買い、憤怒を引き起こした。さらに、ダンモアは「攻撃された場合には市を焼き払う」と脅迫するなど緊張が高まった。

事件後の展開

4月29日、レキシントンとコンコードでの戦闘の知らせが田舎へと広まり、民兵隊がウィリアムズバーグへ行軍する準備を始めた。パトリック・ヘンリーが火薬の返還を求め、最終的には330ポンドでの支払いに合意した。ヘンリーはその後、フィラデルフィアでの第二次大陸会議に出席することになり、その金を会議のために用意することを約束した。

この事件の結果、ヘンリーの名声は高まり、ダンモアの権威は失墜した。ダンモアは最終的にウィリアムズバーグを離れ、植民地における彼の支配は終わりを迎えた。バージニア植民地の民は、新しい政治体制の下で独立に向けた道を進み始めたのである。

この火薬事件は、アメリカ独立戦争における植民地の集結と抗戦の象徴的な出来事とみなされており、愛国者たちの士気を高める原動力となった。その後の独立への道筋を形作る重要な一幕であったと言える。

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