火除地

火除地（ひよけち）

江戸時代における火除地とは、明暦3年（1657年）の大火を受け、江戸幕府が設けた防火対策のための空地を指します。火除地は、火災の延焼を防ぐ各種の目的を持ち、広くは類似の機能を持つ街路をも含む概念ですが、特に防火用として設置された空間を狭義に「火除明地」と区別する場合もあります。

概要

江戸は急速に発展を遂げる中で、火災に対する危険性が次第に高まりました。そのため、火除地の設置構想は早くから存在していたものの、具体的な導入が行われたのは明暦の大火による甚大な被害を受けた後のことでした。大火を契機に、焼け跡を利用して5ヶ所が新たに火除地とされ、以降も江戸城への延焼防止を主目的として、北西側を中心に少しずつその数は増えていきました。また、享保年間には13ヶ所に達するまでに至りました。

火除地は単なる空地に過ぎなかったわけではなく、特定の範囲内で公私の利用が認められました。このため、幕府の薬草園や馬場、また小規模な露店が設置されるといった利用方法が存在していました。

過去に存在した火除地

火除地は、江戸城の延焼を防ぎ、町人地内での火事を抑えるために様々な場所に配置されました。以下にその具体例を挙げます。

• - 外堀と隅田川の隣接地

- 溜池、外堀、神田川、隅田川の水面と土手

• - 広小路

- 白銀町、水戸邸前、湯島、御茶水、筋違橋、両国、尾張邸裏など

• - 江戸城の北西方向

- 田安門外、代官町

• - 町人地の中心部

- 中橋、長崎町、大工町、四日市、四日市防火堤

発達と変容

元禄期（17世紀末）までは火除地は主に防火目的の専用空間でしたが、元禄から享保期（18世紀前半）になると、防火体制の向上や都市共同体の発展により、防火機能よりもレクリエーションの広場としての性格が強まりました。時代が進むにつれて、その利用目的が歓楽地としての発展へと変わっていきます。

しかし、楽しみの場としての利用が過度になったため、延享年間（1740年代）には一部の地域で娯楽の利用が禁止され、火除機能を純化するための対策が講じられました。それでもなお、両国橋周辺は宝暦年間（1750年代）には大変な賑わいを見せました。

その後の明和・安永期（18世紀後半）において、火除地での娯楽施設の設置請求が相次ぎ、かつて禁止されていた地域でも再びレクリエーションの場として発展していくこととなりました。さらに、8代将軍徳川吉宗の治世においては、江戸への人口集中が進み、新たな火除地の設置が困難となる中で、防火建築の奨励が中心となる防火対策を取りました。

幕末に至ると、幕府の弱体化、市街地の高度利用の必要性、経済的能力の不足によって、火除地や防火建築の数は減少し、明治維新を迎えることとなります。これにより、火除地の存在意義も変わっていくことになりました。

参考文献

• - 江戸の広場 ISBN 4130201387

関連項目

• - 江戸の火事
• - 防火帯
• - 代地
• - ヒラキ_(芸能)

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