炉穴

炉穴（ろあな）の概要

炉穴は、日本列島の縄文時代草創期から早期に見られる遺構です。この遺構の実態については、さまざまな研究者によって異なる解釈がなされています。一般には、燻製などを製造するための調理施設であると考えられています。その外観は、火を焚いた土坑と煙道が一体となったものです。これにより、「煙道付炉穴」という名称が使われたり、「連結土坑」や「連穴土坑」と呼ばれることもあります。

遺構の形状と構造

縄文時代に造られた炉穴は、地表から見ると、長軸が約2メートル、短軸が1メートル、深さが50〜60センチメートルの楕円形もしくは隅丸の二等辺三角形状の土坑です。そして、片側の短辺から上向きにカーブするトンネル状の掘り込みが地表に貫通しています。この土坑とトンネルの接続部分には、火によって高温に晒された土が赤褐色になっており、炭化物も見つかっています。これにより、土坑からトンネルを通じて煙を排出できる機能を持つ炉であったと考えられています。

文化財を保護する専門家、山田猛氏はこの構造を「燃焼坑」と「煙道」、「煙出坑」と名付け、研究が進む中で多くの学者がこの理解を共有しています。1938年に千葉県の飛ノ台貝塚で最初にこの種の遺構が発見されて以来、関連する発掘が活発に行われてきました。

煙道付炉穴の発見とその影響

千葉県船橋市での発掘により、極めて古い時代の墓に関連する証拠が確認され、その後の研究によって煙道が発見されました。山内清男氏が提唱した「炉穴」という用語は、この遺構の名として広く受け入れられました。近年の研究により、連続的に存在する複数の煙道付炉穴が発見され、これが日本における一連の文化的変遷に関連づけられるようになりました。

地域ごとの発展と使用方法

最初に九州南部で見られ、その後関東地域に伝わっていったとされる炉穴は、当時の集落の一部として繰り返し使用されていたと考えられています。同一の地域から数十基の炉穴が見つかることも珍しくなく、使用されていた世代を超えて利用されていたことが示唆されています。

竪穴建物の施設の跡地に重なる形で穴が見られることもあり、既存の建物の窪みに新たに設けられた可能性が考えられています。このような工夫は、生活のための効率的なスペースの利用を意図したものでしょう。

変遷と機能

縄文時代前期に入ると、地床炉などの屋内炉が一般化し、炉穴は次第に消えつつあることが想定されています。使用法については、さまざまな復元案が存在します。たとえば、動物の肉を燻して保存する方法や、土器を用いて煮炊きする際にカマドとして机を利用するなどの提案がされています。さらに、山田猛氏は「堅果類を乾燥させるための乾燥施設」という見解も持っています。

結論

炉穴は縄文時代の調理に用いられた重要な遺構であり、その機能や使用方法については今もなお多くの考古学者が研究を重ねています。その構造と発見は、日本の歴史と文化の理解において欠かせない要素となっています。

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