炎上 (映画)

映画『炎上』の詳細

『炎上』は、1958年8月19日に公開された日本の映画であり、製作は大映が担当しました。この作品は、作家三島由紀夫の長編小説『金閣寺』を映画化したもので、市川崑監督によって手掛けられました。本作は99分のモノクロ映像で、特に視覚的な表現に優れた一作として評価されています。

市川崑にとって、この映画は大映に移籍してからの5本目の作品であり、主演は日本の時代劇俳優、市川雷蔵でした。雷蔵はデビューから4年目で、これが48本目の映画であり、初めての現代劇として吃音症の青年を熱演しました。彼の演技は高く評価され、多くの主演男優賞を受賞しています。

『炎上』は三島文学の映画化においてひときわ評価が高い作品とされており、白黒とシネスコの見事な映像美がトップクラスの監督としての市川崑の名声を確立するきっかけとなりました。映画の中表現された「金閣寺」は、実際には「驟閣寺」という名称に変更されています。また、登場人物の名前やストーリーの一部は原作と異なっています。

公開当時のキャッチコピーには、「汚れた母、信頼を裏切った師、何が彼に放火させたのかという青年の怒りと反抗！」や、「三島、崑、雷蔵という異色トリオが放つ、本年度ベストワンを約束された文芸巨篇」などが宣伝されました。併映作品には、天野信監督による『消えた小判屋敷』がありました。

製作の経緯

企画・脚本・監督

映画の製作を主導した大映のプロデューサー、藤井浩明は人情劇が主流だった当時の日本映画に対し、新たな息吹をもたらしたいと考えました。彼は三島の小説『金閣寺』を見て、映画化を熱望しました。しかし、当初市川は原作の完璧な美しさを映画で表現するのは難しいと考え、最初は依頼を断りました。藤井の情熱に押され、最終的に市川はこのプロジェクトを受けることに決めました。

寺院側からの反対

しかし、金閣寺の住職から映画化に関する強い反対があり、仏教界全体が反発しました。結果として、タイトルや寺の名前を変えることでようやく許可を得ることができました。このトラブルが影響し、製作は予定よりも半年遅れてしまうことになります。

キャスティング

主役の選考

主演については、雷蔵の起用までに物議が生じました。初めは現代劇の若手俳優・川口浩が選ばれましたが、社長から反対を受け、急遽雷蔵に変更されました。映画の内容と雷蔵の役柄は真逆であるため懸念もありましたが、結果的には素晴らしい演技で彼の演技力が高く評価されることとなりました。

雷蔵の決意

市川雷蔵は、初めての現代劇での役を受け止めるための強い意志を持っていました。特に原作者である三島由紀夫が自分を想定してくれたことが、彼の意欲をさらに高めました。雷蔵は苦境を乗り越え、この役を全うすることができました。

映像美と音響効果

市川監督はモノクロとシネスコを用いることで、登場人物の心理や内面を映し出す独特なショットを展開しました。特に、ワンシーンでは雷蔵の内面の孤独が見事に描写されていました。同時に、音楽担当の黛敏郎との意見調整も重要なポイントで、全体的に無音に近い状態を目指し、作品に深みを与えました。

総評

映画『炎上』は市川崑監督の作品の中でも傑作とされ、市川雷蔵の演技も高く評価されました。特に、作品が市川雷蔵の俳優としてのキャリアにおいて重要な転機となり、彼の表現力が広く認識される契機となりました。国際的にも高く評価され、いくつかの映画祭にも出品されました。

この映画は、巧みな演出、深い物語、そして心に響く演技によって、日本映画史上の重要な作品として今なお語り継がれています。

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