無機エレクトロルミネッセンス

無機エレクトロルミネッセンス（無機EL）とは

無機エレクトロルミネッセンス（Inorganic Electro-Luminescence、IEL、無機EL）は、無機化合物の蛍光体に電圧を印加することで発生する、真性エレクトロルミネセンスの一種です。この現象を利用した発光デバイスは、様々な分野での応用が期待されています。

基本原理と材料

一般的に、無機ELデバイスは硫化亜鉛（ZnS）などの無機化合物を基質として使用します。これに、銅（Cu）などの発光中心となる不純物を添加し、高温で焼結することで作製されます。この際、添加する不純物の種類によって、発光する光の色を調整することができます。発光の原理としては、印加された電圧によって電子が励起され、元の状態に戻る際に光を放出する現象を利用しています。

発光層の形成方法

無機ELデバイスの発光層の形成方法には、大きく分けて分散型と薄膜型の2種類があります。

分散型: 発光物質を絶縁性の媒体に均一に分散させ、その層を形成します。この方法では、比較的簡単に大面積の発光層を形成することができます。
薄膜型: スパッタリングや蒸着などの技術を用いて、発光物質を薄膜として形成します。この方法では、より均一で高性能な発光層を作製することが可能です。

駆動方式

無機ELデバイスは、駆動方式によって直流駆動型と交流駆動型に分類されます。

直流駆動型: 直流電圧を印加して発光させますが、安定した長時間動作が難しく、実用化には至っていません。
交流駆動型: 交流電圧を印加して発光させます。現在、商用利用されている無機ELデバイスのほとんどが、この交流駆動型です。交流駆動型では、デバイスの耐久性や発光効率の面で有利とされています。

無機ELの課題と展望

無機ELの駆動電圧は、硫化亜鉛を基質とする場合、交流100V以上と高電圧である点が課題です。有機ELが低電圧で駆動できるのに対し、この点が無機ELの開発を遅らせる要因の一つとなっています。

また、無機ELは三原色発光における色再現性が低いという課題もあります。そのため、現状では携帯電話のバックライトなど、単色発光での利用が主となっています。しかし、無機材料を使用しているため、有機ELに比べて長寿命であるという大きな利点があります。

発光面の大面積化に関しても、無機ELには直接的な障壁が少ないため、この利点を活かすことで、将来的にディスプレイやテレビ、照明などへの応用が期待されています。また、有機ELと異なり、気密を確保する必要がないため、塗装が可能であり、この特性を利用した製品も登場しています。

まとめ

無機ELは、高電圧駆動や色再現性などの課題を抱えながらも、長寿命や大面積化の可能性といった利点を持つ技術です。今後の技術開発によって、ディスプレイや照明分野での応用が拡大することが期待されます。

関連項目

エレクトロルミネセンス
有機エレクトロルミネッセンス（有機EL）
* 発光ダイオード（LED）

もう一度検索