無燃料重量

無燃料重量（ZFW）とは

無燃料重量（Zero-Fuel Weight, ZFW）とは、航空機が搭載している燃料の重量を除いた重量を指します。これは航空機の設計と運用において非常に重要な概念です。航空機の離陸重量は、機体自体の重量、ペイロード（乗客や貨物）、そして燃料の重量の合計ですが、このうち燃料重量を除いたものが無燃料重量となります。日本語では零燃料重量とも呼ばれます。

無燃料重量の重要性

航空機が飛行中に揚力を生み出すのは主に主翼の役割ですが、胴体部分の重量も主翼の揚力によって支えられています。そのため、主翼の付け根部分、つまり翼胴接合部には、せん断応力と曲げモーメントという力が働きます。特に長距離を飛行する航空機では、燃料の重量が離陸重量の大きな割合を占めるため、燃料の搭載位置が翼胴接合部への負荷に大きく影響します。

ほとんどの航空機では、燃料は主翼内に搭載されます。これは、燃料を胴体内に搭載した場合、翼胴接合部にかかる力が大きくなりすぎるためです。燃料を主翼に搭載すると、燃料が消費されるにつれて主翼を押し下げる力は減少しますが、同時に機体重量が軽くなるため、主翼が必要とする揚力も減少し、結果的に翼胴接合部に生じる曲げモーメントはほぼ一定に保たれます。このため、主翼の付け根の強度は、無燃料重量を基準に計算・設計されます。

無燃料重量とペイロード、燃料の関係

無燃料重量は、航空機の搭載可能なペイロードや燃料の重量を制限します。例えば、国際線旅客機のボーイング747-400では、最大離陸重量は約400トンですが、空虚重量（機体自体の重量）は約200トン弱です。この差は約200トン以上ありますが、ペイロードと燃料を自由に組み合わせられるわけではありません。ペイロードが過剰な状態では、たとえ総重量が最大離陸重量を下回っていても、主翼の付け根にかかる力が許容限度を超えてしまい、安全に飛行することができません。このため、ペイロードには別途制限が設けられており、これは構造最大ペイロードなどと呼ばれます。

無燃料重量は、機体自体の重量にペイロードを加えたもので、この値によって機体にかかる負荷が規定されます。貨物機の場合は、一般的に翼胴接合部が強化されているため、最大ペイロード（つまり最大無燃料重量）が増加します。ただし、最大離陸重量はエンジンの出力によって決まるため、燃料の搭載量には制限がかかります。貨物機は最大ペイロードで運航されることが多いため、燃料をフルタンクにすることができず、これが旅客機に比べて航続距離が短い理由の一つとなっています。

小型航空機の場合

比較的小型の航空機では、一般に機体強度が十分に確保されているため、最大無燃料重量は考慮されないことが多いです。これらの航空機は、主に最大離陸重量のみによって制限を受けます。

まとめ

無燃料重量は、航空機の安全性と運用効率を確保するために重要な概念です。航空機の設計者は、無燃料重量を考慮して機体を設計し、運航者は、無燃料重量の制限内でペイロードと燃料を調整して飛行する必要があります。この制限を理解することは、安全な航空運航に不可欠です。

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