無糖練乳

無糖練乳（むとうれんにゅう）は、牛乳を濃縮した粘稠な液体状の乳製品です。英語では「evaporated milk」と呼ばれ、エバミルクと略されることもあります。本来は加熱精製を意味する「煉乳」と表記しますが、現在では常用漢字の関係から「練乳」と書かれることが多く、法令では「れん乳」と表記されます。ただし、単に「練乳」と言う場合は、加糖練乳を指すことが多い点に注意が必要です。

概要

日本の乳等省令では、無糖練乳は乳脂肪分7%以上、乳固形分25%以上、細菌数0という厳しい基準を満たすものと定義されています。また、「無糖れん乳は濃縮乳であって直接飲用に供する目的で販売されるもの」とされています。濃縮乳は無糖練乳とほぼ同じ成分ですが、食品加工の際に殺菌されることを想定し、細菌数の基準が1gあたり10万以下と緩やかになっています。

無糖練乳は通常、缶詰として販売されており、加糖練乳のような強い粘度がないため、チューブ入りの製品はあまり見られません。

製法

一般的な製法は、まず原料の牛乳を加熱殺菌し、煮詰めて半分以上濃縮します。その後、成分を均質化し、缶などに詰めて再度加熱殺菌します。この製法は、19世紀にジョン・バプティスト・メインバーグによって発明されました。彼はアングロスイス・コンデンスミルク・カンパニーに商品化を提案しましたが却下されたため、アメリカに渡りヘルヴェティア・ミルク・コンデンシング・カンパニー（現在のPet社）を設立し、製品として販売を開始しました。

現代では、生乳を単純に煮詰めるだけでなく、脱脂粉乳やカゼインなどの粉末乳製品、植物油、増粘多糖類などを配合して、濃度や風味を調整する方法が一般的です。製品によって原料が異なるため、風味にも違いがあり、消費者は好みに合わせてブランドを選ぶことができます。

用途

無糖練乳は、コーヒーや紅茶のクリーマーとして使用されるほか、ベシャメルソースなどの料理用クリームソース、ミルク風味の菓子などの材料としても広く利用されています。ネスレ社の「カーネーション」は、この種の製品の中で最も有名なブランドの一つです。

マレーシアやシンガポールでは、無糖練乳を加えたコーヒーを「コピC」、紅茶を「テーC」と呼びます（Cはカーネーションの略）。香港の茶餐廳（喫茶店）でも「花奶」（ファーナーイ）と呼ばれ、香港式ミルクティーや鴛鴦茶などの飲み物、マンゴープリンのトッピングなど、多くのメニューに欠かせない存在です。また、フィリピンでは、粗く砕いた氷にエバミルクをたっぷりかけた「ハロハロ」という人気のかき氷があります。

日本では、「カーネーション」ブランドの製品はほとんど販売されていません。沖縄県では、本土復帰に伴う経過措置として近年まで販売されていましたが、2000年代に販売が終了し、現在は中小業者が少量を並行輸入する程度です。ネスレ日本では、「ミルクメイド」という別ブランドで無糖練乳を製造販売していますが、こちらは生乳を原料としているため、脱脂粉乳を使用している「カーネーション」とは風味が異なります。

製造業者

日本

ネスレ日本（ミルクメイド）
株式会社 明治（旧明治乳業）
雪印メグミルク
筑波乳業
守山乳業

日本以外

ネスレ（カーネーション）
フリースラントフーズ（ブラック&ホワイト）

関連項目

加糖練乳

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