無線学会

無線学会（IRE）とは

無線学会（Institute of Radio Engineers, IRE）は、1912年から1962年までアメリカ合衆国に存在した、電気・電子工学分野の学会です。1963年1月1日、アメリカ電気学会（AIEE）と合併し、現在のIEEE（Institute of Electrical and Electronics Engineers）となりました。日本語では「無線技術者協会」と訳されることもあります。

設立の背景

20世紀初頭、無線技術は急速に発展し、その技術者たちの間で専門的な組織を求める動きが高まりました。1908年から1912年にかけて、いくつかの技術者組織が設立を試み、その中にはSociety of Wireless Telegraph Engineers（SWTE）とthe Wireless Institute（TWI）がありました。1912年、SWTEとTWIが合併し、ニューヨークでIREが設立されました。当時、電気工学の分野ではアメリカ電気学会（AIEE）が既に存在していましたが、IREの創設者たちは、AIEEが保守的で電力分野に偏っていると考え、より国際的で無線技術に特化した学会を目指しました。このため、IREは役員の一部をアメリカ国外から選出するという方針を採用しました。

IREの活動と役割

20世紀前半、無線通信は飛躍的な発展を遂げました。IREは、無線システムの開発者や運用者のための専門家コミュニティとして、以下の重要な役割を担いました。

標準化: 周波数スペクトル、変調技術、試験方法、無線機器の標準化と規制に積極的に関与しました。
調査研究: 無線技術に関する研究を奨励し、新しい成果を実務家や研究者の間で普及させました。
専門誌の発行: 1913年に創刊された「Proceedings of the IRE」（現在の「Proceedings of the IEEE」）は、最も注目すべき専門誌の一つです。アルフレッド・ノートン・ゴールドスミスが41年間編集長を務めました。
会員間の交流: 地域グループ（1914年開始）と専門家グループ（1948年開始）を組織し、会員間の協力と交流を促進しました。
規格制定への貢献: 連邦無線委員会（現在の連邦通信委員会）の計画において主要な役割を果たし、アメリカ電機工業会、無線製造者協会、ラジオ・テレビ製造者協会、全米テレビジョンシステム委員会と密接に協力して規格を制定しました。
専門家の認定: 1914年にIREフェローの会員資格を制定し、専門家としての認知度を高めるプログラムを開始しました。最初のフェローは、無線電信のパイオニアであるヨーナタン・ツェネックでした。

初代会長と著名な会長

IREの初代会長は、アメリカ電信会社（Wireless Company of America）のチーフエンジニアであるロバート・H・マリオットでした。その他の著名な会長には、アーヴィング・ラングミュア（1923年）、ジョン・H・モーレクロフト（1924年）、リー・ド・フォレスト（1930年）、ルイス・アラン・ヘイゼルティン（1936年）、フレデリック・ターマン（1941年）、アーサー・F・ヴァンダイク（1942年）、ウィリアム・ヒューレット（1954年）、アーンスト・ウェバー（1959年、IEEEの初代会長）、パトリック・E・ハガティ（1962年）などがいます。

合併へ

1940年代初頭までIREは比較的小規模な組織でしたが、1940年代の電気通信の重要性の高まりと電子工学の分野の発展により、多くの研究者や学生がIREに注目するようになりました。電気工学の学生や若手研究者は、競合団体のAIEEよりもIREを支持する傾向が強まりました。1957年には、IREの会員数は約57,000人に達し、AIEEの会員数を上回りました。この状況を受け、1957年から両組織の合併交渉が始まり、1963年に新たな学会であるIEEE（Institute of Electrical and Electronics Engineers）が誕生しました。合併に反対したIREとAIEEの会員は、その後、Society of Broadcast Engineersなどの新たな団体を設立しました。

賞

IREは毎年、IRE栄誉賞（IRE Medal of Honor）を授与していました。この賞はIEEEに引き継がれ、現在はIEEE栄誉賞（IEEE Medal of Honor）として継続されています。

関連項目

米国情報処理学会連合会（AFIPS）

外部リンク

IEEE website

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