焼峰山

焼峰山（やきみねやま）

新潟県新発田市にそびえる標高1,085.8メートルの山。焼峰山という名の他に、「ヤケミネヤマ」とも呼ばれ、古くは「トウダイサン」という呼び方も伝わっています。飯豊（いいで）連峰のほぼ中央部にある門内岳（もんないだけ）から西南西へ続く尾根の最西端に位置します。新発田の市街地からは、連なる尾根のささやかな隆起に見えますが、山麓に近づくにつれて存在感を増し、あたかも独立峰のような堂々たる山容を現します。その印象深い姿にもかかわらず、古い文献における山の記述は極めて少なく、祭祀に関連する遺構も見つかっていません。

過去には国鉄赤谷線が運行されており、終着駅である東赤谷駅が登山口に近かったことから、「駅から気軽に登れる山」として週末には多くの登山客で賑わいました。しかし、赤谷線の廃止に伴い登山者の数は減少し、現在では訪れる人もかつてほど多くはありません。

登山ルート

国土地理院の2万5千分の1地形図には、山へ至る主な登山道が複数記されています。最も一般的に利用されているのは、山の西麓にある滝谷（たきだに）集落を起点とする滝谷尾根ルートです。また、南側にある加治川治水ダムからは松ノ木尾根ルートがあり、こちらはより経験のある登山者向けとされています。これら二つのルートはいずれも日帰りでの登山が十分可能です。一方、山の北西に位置する内ノ倉（うちのくら）ダムからの道は現在では廃道化が進んでおり、通行は危険な状態となっています。山の南面を流れる沢では、沢登りも楽しむことができます。

滝谷口登山道

滝谷集落のはずれから、鬱蒼とした杉林の中の林道を進みます。自家用車で訪れる場合、登山口を過ぎた先にいくつかの駐車スペースがあります。登山口からは、ひたすら樹林帯の中を登る行程が続きます。およそ1時間ほどでウグイス平と呼ばれる鞍部に到着すると、視界がようやく開け、木々の間から前方にそびえる整った円錐形の山頂を望むことができます。

ウグイス平からは一転して急な登りが始まります。ルート中には鎖やロープが設置されていますが、足元が不安定な箇所もあるため、特に下山時には十分な注意が必要です。やがて細く尖った岩稜帯に差し掛かると、左右への展望が大きく広がります。右手下にはウジノ沢が荒々しい岩肌を露呈し、足元は深く切れ落ちており、スリル満点です。岩稜帯を通過すると、東側を巻くルートとなり、間もなく清水釜（しみずがま）に到着します。ここは真夏でも涸れることなく冷たく清らかな水が湧き出ており、登山でかいた汗を癒してくれます。

さらに巻き道を進むと再び稜線へと戻り、小さなピークに出ます。この場所は後述する修蔵峰（しゅうぞうみね）と呼ばれており、遭難事故を悼む慰霊碑が建立されています。ここからは目の前にピラミッドのような形をした山頂が目前に迫ります。山頂へは、ここから北側を巻くルートをしばらく進んだ後、山頂直下の急斜面を登り詰めることで到達します。山頂からは360度の壮大なパノラマが広がり、これまでの疲労を忘れさせてくれます。円錐形に見えていた山頂は、実際には意外と細長い形状をしています。山頂の東方には「焼峰の頭（やきみねのあたま）」と呼ばれるピークがあり、こちらからは飯豊連峰の眺めがさらに優れているため、足を延してみることをお勧めします。

沢登り

焼峰山の南側を流れる飯豊川（加治川）は流れが速く、その流域には大小様々な沢が刻まれています。焼峰山周辺では、特に南面を流れるウジノ沢と袖ノ沢が沢登りの好ルートとして知られています。小さな滝やゴルジュ（狭い谷）を交えながら、短いながらも変化に富んだ渓相が魅力です。沢の詰め（源頭部）は、スラブ状の急峻な岩場となっており、さらに猛烈なヤブに阻まれて苦労させられます。また、夏場にはメジロ（アブの一種）が大量発生し、登山者を悩ませることがあります。

修蔵峰（しゅうぞうみね）

この場所は、1957年（昭和32年）12月30日に発生した、新潟県立新発田高等学校山岳部の冬山合宿中の遭難事故に由来します。激しい風雪の中で命を落とした部員、本田修蔵氏を追悼するため、同校山岳部と滝谷集落の住民の手によって、この地に慰霊碑が建立されました。初代の慰霊碑は遭難事故の翌年に建てられましたが、長年の風雨により損傷が進んだため、2007年（平成19年）に同校山岳部のOBの方々により全面的な改修工事が行われ、現在に至ります。

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