煙が目にしみる (曲)

煙が目にしみる

「煙が目にしみる」（けむりがめにしみる、Smoke Gets In Your Eyes）は、1933年に上演されたミュージカル『ロバータ』の中で披露された楽曲であり、ジャズのスタンダードとしても広く知られています。この曲は、著名な作曲家ジェローム・カーンによるもので、歌詞はオットー・ハルバックが手がけています。

曲の背景

『ロバータ』は、パリの一流ファッション店を営むアメリカ人オーナーと亡命中のロシア王女との恋愛を描いたロマンティック・コメディです。この物語における歌は、恋の切なさや複雑な感情を表現するために用いられました。実は、ジェローム・カーンは元々1927年に他のミュージカル『ショウ・ボート』のタップダンス用にこの曲を作曲したのですが、その際には使用されずに終わりました。後に、1932年にラジオのテーマ曲として行進曲の形で再利用されることとなります。

歌詞の中に織り込まれた「smoke gets in your eyes」というフレーズは、恋は盲目であることを指す言葉として使われています。また、歌詞の2番ではエスプリの利いたジョークとして扱われており、涙を隠すための言い訳にされています。『ロバータ』の劇中で歌われるセリフ、「When your heart's on fire, smoke gets in your eyes」は、ロシアのことわざに由来していると言われています。

歴史的な録音

この曲は1933年10月13日にガートルード・ニーセンによって最初にレコーディングされました。その翌年には、ポール・ホワイトマンのバージョンがヒットチャートで1位を獲得するなど、人気を博しました。また、1946年にはナット・キング・コールによるカバーも登場し、さらに多くのアーティストによってリリースされることとなります。

特に1958年には、コーラスグループのザ・プラターズがこの曲を再び流行させました。このカヴァーは、マックス・ドレイフェスがバック・ラムに提案したことから始まったものでしたが、カーンの妻が異議を唱え、販売停止を求める事態に発展しました。しかし、オスカー・ハマースタインがカーン夫人を説得し、歌の復活がもたらす素晴らしさを語ったことで、100万枚の印税を約束し、販売の許可を得ることになりました。

カヴァーアーティスト

この名曲は多くのアーティストによってカヴァーされており、その中には以下のような著名なミュージシャンが含まれています。

• - アメリカ合衆国: ベニー・グッドマン（1941年）、プラターズ（1958年）、ナット・キング・コール、グレン・ミラー、フランク・シナトラ、ソニー・ロリンズほか。
• - イギリス: ブライアン・フェリー（1974年）。
• - 日本: 阿川泰子、山下達郎、ザ・キング・トーンズ。
• - 台湾: テレサ・テン。

「煙が目にしみる」は、そのメロディと歌詞の魅力から、時代を超えて多くの人々に愛され続けている名曲です。この曲は、恋愛の無常さや偶然の痛みを巧みに表現しており、聴く人の心に深い印象を与えています。

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