熊倉一雄

熊倉一雄について

熊倉一雄（くまくら かずお、1927年1月30日 - 2015年10月12日）は、日本の俳優、声優、演出家として活躍し、特にテアトル・エコーにおいてその才覚を発揮しました。彼は生涯にわたり、演劇と声優の分野で数々の作品に関わり、多くの人々に影響を与えてきました。

早年期の背景

熊倉は東京府麻布区の三ノ橋に生まれ、父は工作機械のセールスマン、母方の祖父は傘の会社の技師長でありました。青山での居住を経て、彼の家族は京橋区に移住し、祖父母と共に暮らしました。虚弱体質だった熊倉は、小学2年生の頃に肋膜炎を患い、長期入院を余儀なくされました。その間、本を読み耽り、エジソンに憧れて発明家になりたいという夢を抱いていました。

教育と演劇への道

旧制東京府立第八中学校に進学後、家計が安定したことにより、家族は山の手に転居しました。慶應義塾大学経済学部への進学を果たしますが、戦中の混乱で中退。その後、外交官志望で都立高等学校に進学し、休学を経て医者を志すも、最終的に演劇に目覚めました。理科演劇研究会への参加が彼の演劇の道を開き、初めての演技賞を獲得することになります。1949年には劇団感覚座を設立しましたが、解散してしまいます。

俳優活動の開始

1950年には東京演技アカデミー楽劇科に入学し、ミュージカルを中心に学びますが、学校の倒産に遭遇してしまい、アルバイトで生計を立てながら苦しい生活が続きます。苦境の中で、多才な腕前を生かし看板書きなどの仕事をこなすことで、徐々に舞台活動を再開しました。1956年にテアトル・エコーに入団し、その後声優としての活動を広げていきました。

声優と演出家としてのキャリア

テアトル・エコーにおいて、熊倉は数々の声優作品で出色の出来を見せ、特に『ヒッチコック劇場』でアルフレッド・ヒッチコックの吹き替えを担当したことが印象深いです。また、アニメ作品『ゲゲゲの鬼太郎』の主題歌を歌い上げるなど、幅広い才能を発揮しました。70年代からは井上ひさしとともに、作品の作・演出コンビとして日本の演劇界に名を刻み、多くの話題作を生み出しました。

受賞歴

熊倉一雄は1991年に紫綬褒章、1998年に勲四等旭日小綬章を受賞し、聞かれることの多い声や指導力は後進に強い影響を与えました。彼の演技は多くの人々の心に残り、特に『名探偵ポワロ』のエルキュール・ポアロの声は彼のライフワークとなりました。

最後の時

2015年10月12日、直腸癌のため88歳で帰らぬ人となりました。最後の舞台となった「遭難姉妹と毒キノコ」への出演は、彼の俳優人生の集大成とも言えるものでした。熊倉一雄の生涯は、演劇と声優を通じて、日本の文化に深い足跡を残したことに間違いありません。

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