熊概

熊概（ゆう がい）の生涯

熊概（1385年 - 1434年）は、明代の官僚であり、字を元節と称しました。南昌府豊城県を本貫とし、その生涯は官僚としての職務と、民を思う心に満ちたものでした。

生い立ちと初期の経歴

1385年1月10日、熊直と郭氏の間に生まれた熊概は、幼くして父を亡くしました。母が胡氏と再婚したため、一時的に胡姓を名乗りました。1411年、永楽9年に進士に及第し、御史に任命されたことが、彼の官僚としてのキャリアの始まりとなります。

広西按察使としての活躍

1418年、永楽16年に広西按察使に抜擢された熊概は、その地で発生した少数民族の反乱に対処することになります。当時、布政使は靖江王朱佐敬の兵を動員して反乱を鎮圧しようとしましたが、熊概はこれを不要と判断し、反対しました。この判断は、彼の冷静さと民への配慮を示すものと言えるでしょう。

南直隷・浙江巡視と不正の摘発

1425年、洪熙元年には、原官のまま布政使の周幹、参政の葉春と共に南直隷や浙江を巡視するよう命じられます。同年8月、大理寺卿に抜擢され、葉春と共に南直隷と浙江の巡撫を兼任することになりました。

巡撫として、熊概は浙西で横行していた悪党を捕らえ、厳しく処断しました。また、諸衛所への食糧輸送が滞り、軍の食糧が不足している状況を改善するため、諸府から贖罪米42000石あまりを徴発し、軍に供給するという措置を講じました。この迅速な対応は、彼の実行力と民を思う気持ちの表れと言えるでしょう。

宣徳帝への諫言と民への配慮

1427年、宣徳2年、行在都御史が熊概と葉春を弾劾しましたが、宣徳帝はこれを不問にしました。また、宣徳帝は江南に部官を派遣して製紙業を興し、銅や鉄を取引させようとしましたが、熊概は洪水被害で民衆が飢えている状況を鑑み、この政策を中止するよう進言しました。この進言は、彼の民を思う心が強く表れているエピソードと言えるでしょう。

晩年と熊姓への復帰

1430年、宣徳5年3月に北京に帰還した際、熊姓に戻し、南京右都御史に転任しました。さらに同年8月には刑部の事務も兼掌しました。1434年10月、甲寅に亡くなりました。享年50歳。


熊概は、その生涯を通じて、民を思い、不正を憎み、職務に忠実な官僚でした。彼の功績と人となりは、後世に語り継がれるべきでしょう。著書に『芝山集』40巻があり、彼の思想や才能を知る上で貴重な資料となっています。

参考資料

『明史』巻159 列伝第47
都察院右都御史熊公墓誌銘（徐紘『明名臣琬琰録』巻23所収）

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