熊翁博

熊翁博（くまおう ひろし）は、1965年10月2日に埼玉県熊谷市で生まれ、1997年10月6日に32歳の若さで急逝した元大相撲力士です。本名を佐藤洋之といい、高砂部屋に所属していました。得意手は押し、諸差し、寄り。身長176cm、体重118kgと、力士としては小柄な体格ながら、その機敏な動きと力強い相撲で観客を魅了しました。最高位は東十両5枚目（1990年11月場所）で、血液型はB型です。

生い立ちと入門

溶接工の長男として生まれた熊翁は、小学生時代はソフトボールチームで投手兼主将を務め、中学校ではバレーボール部と陸上競技部に所属していました。しかし、幼い頃から大相撲への憧れを抱いており、特に高見山のファンでした。高砂（元横綱・朝潮）に直接入門志願の手紙を送り、見学に招待された後、中学卒業と同時に高砂部屋に入門しました。

力士としてのキャリア

1981年3月場所に初土俵を踏んだ熊翁は、当初は体重が80kg台と小柄でしたが、連日の厳しい稽古で諸差しからの速攻相撲を磨き、その小柄さを補いました。最初は本名である佐藤洋之を四股名としていましたが、1983年3月場所から高見洋、1987年3月場所以降は熊翁と改名しました。

熊翁を名乗って間もない時期には三段目に陥落するなど苦労もありましたが、1988年9月場所で幕下優勝を果たし、その実力を示しました。その後、一時的に幕下下位からの出直しを余儀なくされましたが、1990年3月場所で念願の十両昇進を果たしました。この場所では、後に横綱となる曙と若花田（後の若乃花）も同時に十両昇進を果たしており、話題となりました。しかし、十両では5勝10敗と負け越し、一旦幕下に陥落してしまいます。その後、2場所で十両に復帰し、以降は十両の中位でコンスタントな成績を収めました。諸差しを得意としながらも、前に出る押し相撲も得意とし、その多彩な取り口が魅力でした。また、歌舞伎役者のような凛々しい顔立ちと、小柄な体格からは想像できない力強い相撲で、女性ファンからも高い人気を集めていました。

1991年3月場所中に左眼球を負傷し、途中休場を余儀なくされました。その後も無理をして出場を続け、十両の座を維持していましたが、1993年5月場所で幕下に陥落。以降、再び関取に返り咲くことは叶いませんでした。1994年3月場所を最後に現役を引退しました。

引退後と突然の死

現役引退後、熊翁は兄弟子である奄美富士が経営するちゃんこ料理店で修行を積みました。そして1995年、故郷の熊谷市に「相撲茶屋 熊翁」を開店。店の経営が軌道に乗り始めた矢先の1997年10月6日、交通事故により32歳の若さで急逝しました。突然の訃報は、多くのファンや関係者に深い悲しみをもたらしました。

熊翁の死後、ちゃんこ店は長く付け人を務めていた元幕下・火の竜が引き継ぎ、2020年2月まで営業を続けました。

主な戦績

生涯成績：328勝328敗10休 勝率.500
十両成績：98勝125敗2休 勝率.439
現役在位：79場所
十両在位：15場所
幕下優勝：1回（1988年9月場所）

改名歴

佐藤 洋之（さとう ひろゆき）：1981年3月場所-1983年1月場所
高見洋 博（たかみなだ ひろし）：1983年3月場所-1987年1月場所
熊翁 博（くまおう ひろし）：1987年3月場所-1994年3月場所

関連項目

大相撲力士一覧

外部リンク

熊翁 博 - 相撲レファレンス

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