熊谷寛夫

熊谷寛夫（くまがい ひろお）は、1911年2月16日に長野県東筑摩郡寿村（現在の松本市）で生まれ、1977年11月5日に逝去した日本の著名な物理学者です。旧姓は青木。1939年に理学博士の学位を取得し、その業績から「高エネルギー物理学の父」と称されています。

生涯

熊谷寛夫は、その生涯を通じて物理学、特に原子核物理学の分野で目覚ましい功績を残しました。

教育と初期の研究: 1928年に旧制松本中学（現・長野県松本深志高等学校）を卒業後、1931年に松本高等学校理科甲類を卒業。1934年には東京帝国大学理学部物理学科を卒業し、大阪帝国大学物理学科の助手としてキャリアをスタートさせました。
博士号取得と東京大学での活動: 1939年、「中性子の研究」で理学博士号を取得。その後、東京帝国大学理学部助教授を経て、1949年には東京大学理学部教授に就任しました。1955年には東京大学原子核研究所の教授となり、研究の中心を移しました。
可変エネルギーサイクロトロンの開発: 1961年、熊谷は「可変エネルギーサイクロトロン」の建設における貢献が評価され、藤原科学財団から藤原賞を受賞しました。このサイクロトロンは世界初のもので、高エネルギー物理学の発展に大きく寄与しました。
サイクロトロン専門委員会: 1962年には、サイクロトロン専門委員会を創設し、委員長としてサイクロトロンの設計を主導しました。
東京大学工学部、千葉大学、日本大学へ: 1967年、東京大学工学部教授に異動。1971年に東京大学を退官後、千葉大学理学部教授に就任。1976年に千葉大学を退官後、日本大学総合科学研究所教授となりました。
受賞と晩年: 1975年には紫綬褒章を受章し、その功績が広く認められました。1977年に逝去した後、1978年に勲二等瑞宝章が追叙されました。

学術活動

熊谷寛夫は、研究活動だけでなく、学会や学術会議でも重要な役割を担いました。日本物理学会会長や日本学術会議委員を歴任し、日本の物理学界の発展に貢献しました。

著作

熊谷寛夫は、多数の著書を執筆し、物理学の知識普及に貢献しました。主な著書には以下があります。

『原子核工学入門』（共著、オーム社、1956年）
『粒子加速装置』（共著、日刊工業新聞社、1966年）
『電磁気学応用 1』（共著、朝倉書店、1966年）
『電磁気学応用 2』（共著、朝倉書店、1967年）
『原子力 エネルギー革命を追って』（筑摩書房、1975年）
『加速器』（共立出版、1975年）
『たこを工夫する』（大日本図書、1976年）
『実験に生きる』（中央公論社、1979年）
『電磁気学』（共著、朝倉書店、1982年）
『真空の物理と応用』（裳華房、1983年）

親族

養父に熊谷岱蔵がいます。

熊谷寛夫の生涯は、日本の物理学の発展に大きく貢献し、後世の科学者たちに多大な影響を与えました。彼の功績は、現在でも高く評価されています。

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