熊谷巌

熊谷巌：波乱の生涯を送った官僚・政治家

熊谷巌（くまがい いわお）は、1883年（明治16年）に岩手県で生まれ、1933年（昭和8年）に波乱の生涯を閉じた人物です。内務官僚、政治家、弁護士という多岐にわたる顔を持ち、衆議院議員を4期務めましたが、その人生は二度の疑獄事件によって大きく翻弄されました。

エリート官僚としての出発

熊谷は、旧制第五高等学校を経て東京帝国大学法科大学を卒業。在学中に文官高等試験司法科と行政科の両方に合格するという、当時としては非常に優秀な人物でした。1910年に内務省に入省し、東京府属、南葛飾郡長、荏原郡長、佐賀県警察部長、警視庁保安部長などの要職を歴任。順風満帆なキャリアを歩んでいるように見えました。

瓦斯疑獄事件による失墜

しかし、1922年に東京市政疑獄（瓦斯疑獄）が発覚すると、熊谷の運命は暗転します。東京地方裁判所から懲役4ヶ月の実刑判決を受け、控訴するも大審院で確定。これにより、正六位の官位を失い、大礼記念章も剥奪されました。エリート官僚としての輝かしいキャリアは、この事件によって大きく傷つけられたのです。

政界への転身と再度の転落

失意の中、熊谷は政治の世界に活路を見出します。1924年の第15回[[衆議院議員総選挙]]で岩手県第4区から立憲政友会公認で立候補し、見事初当選。その後も連続4期当選を果たし、政界での地位を確立していきます。党内では総務を務めるなど、一定の活躍を見せましたが、1933年に再び別の疑獄事件に巻き込まれることになります。

自殺という衝撃的な最期

二度目の疑獄事件により、精神的に追い詰められた熊谷は、1933年11月2日、東京市芝区の自宅土蔵で首を吊って自殺しました。50歳という若さでの衝撃的な最期は、当時の社会に大きな衝撃を与えました。

親族

実業家でGMOインターネット株式会社の代表取締役である熊谷正寿は、熊谷巌の孫にあたります。

まとめ

熊谷巌は、その才能と努力によってエリート官僚、政治家としての地位を築き上げましたが、二度の疑獄事件によってそのキャリアは大きく揺らぎ、最終的には自ら命を絶つという悲劇的な結末を迎えました。彼の生涯は、激動の時代における一人の人間の光と影、そして社会の暗部を映し出していると言えるでしょう。

参考文献

日本国政調査会編『衆議院名鑑 第1回・1890年～第34回・1976年総選挙』国政出版室、1977年。
衆議院・参議院『議会制度百年史 - 衆議院議員名鑑』大蔵省印刷局、1990年。
秦郁彦編『日本官僚制総合事典1868-2000』第2版、東京大学出版会、2007年。
『岩手人名辞典』（財）新渡戸基金、2009年。

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