熊谷正朗

熊谷正朗氏の人物像とロボット研究

熊谷正朗氏は、1974年生まれの日本のロボット研究者です。東北大学で工学博士号を取得後、長年にわたりロボット工学の研究と教育に尽力してきました。特に、彼が主宰するロボット開発工学研究室で製作された玉乗りロボットは、その独創性と技術力で国内外から高い評価を受けています。

幼少期からプログラミングに親しむ

宮城県仙台市で生まれ育った熊谷氏は、幼い頃からモノづくりに強い関心を持っていました。厚紙やセロハンテープを使った工作から始まり、小学生の頃には田宮模型のギヤボックスやラジオ製作を通じて、機械や電子工作の基礎を学びました。小学6年生でパソコンを手に入れるとプログラミングに没頭し、その才能を開花させました。ご両親からの適度な制約が、彼の探求心と理論的な思考を育んだと言えるでしょう。

東北大学での研究生活

東北大学に進学した熊谷氏は、趣味の電子工作とプログラミングを活かすため、機械工学を専攻しました。大学院では、江村超教授のもとで不整地対応二足歩行ロボットの研究に取り組み、機構や制御だけでなく、姿勢センサなどの幅広い知識と技術を習得しました。2000年には博士号を取得し、その後は助手として研究活動を継続。2003年からは東北学院大学で教鞭を執ることになります。

東北学院大学でのロボット開発

東北学院大学では、「ロボット開発工学研究室」を主宰し、学生の自主性を尊重した研究スタイルを確立しました。2004年に学生が提案した玉乗りロボットのアイデアをきっかけに、二輪倒立振子ロボットやパイプ乗りロボットなど、次々とユニークなロボットを開発。玉乗りロボットは、ステッピングモータによるダイレクトドライブ方式を採用し、その動画はニコニコ動画やIEEE Spectrumで公開され、大きな反響を呼びました。ニコニコ動画のコメント機能から得られたアイデアを基に改良を重ね、IEEE Spectrumの動画は数日で50万回再生を記録しました。

地域連携と国際共同研究

2008年には仙台市の地域連携フェローとして、地域企業との連携やメカトロニクス講座を担当。2009年から2010年には、カーネギーメロン大学ロボット研究所に客員教授として滞在し、Ralph L. Hollis教授とともに高出力球面誘導モータの開発に取り組みました。熊谷氏は平面誘導モータを試作した上で球面誘導モータの開発に成功し、特許も取得しています。また、東日本大震災の際には、学生の安否確認や研究室の復旧に尽力し、その経験をIEEEや日本ロボット学会の会誌に寄稿しました。さらに、「対災害ロボティクス・タスクフォース」のメンバーとしても活動しました。

東北学院大学教授として

2013年に東北学院大学教授に昇進してからも、熊谷氏は精力的に活動を続けています。乳幼児の二足歩行を観察・考察し、月刊『プラントエンジニア』で連載を開始。NHK Eテレの「天才てれびくん」に玉乗りロボットが出演するなど、その研究成果は広く社会に浸透しています。近年では、3次元CADや3Dプリンターを駆使し、射出成型で玉乗りロボットの車輪を製作するなど、より実践的なものづくりにも挑戦しています。また、学生の卒業研究テーマとしてパイプオルガンを制作するなど、その発想の幅広さには目を見張るものがあります。オーム社の『ロボコンマガジン』で連載を持つなど、執筆活動にも積極的に取り組んでいます。

受賞歴と著作活動

熊谷氏は、その卓越した研究業績と教育活動により、数々の賞を受賞しています。特に、2016年度の日本機械学会教育賞は、彼の教育に対する情熱と実践的な指導方法が評価されたものです。また、学位論文や監修書籍、解説記事、学術論文など、多数の著作物を発表しており、その知識と経験を広く社会に還元しています。


熊谷正朗氏は、ロボット研究者としてだけでなく、教育者、地域貢献者としても、多岐にわたる分野でその才能を発揮しています。彼の今後の活躍が、ますます期待されます。

もう一度検索