熊野三所権現長光

熊野三所権現長光について

熊野三所権現長光（くまのさんしょごんげんながみつ）は、鎌倉時代に製作された太刀であり、日本の国宝に指定されています。その美しい造形と歴史的背景が魅力の一つとなっており、大阪府茨木市にある株式会社ブレストシーブがこの刀を収蔵しています。

刀工・長船長光とは

この太刀は、備前で活動していた長船派の刀工、長光によって作られました。長光は、長船派の創始者である光忠の実子とされており、彼の作品には華やかな刃文が特徴的です。長光の作品はその多くが国指定文化財に認定されており、特に国宝に指定されているものが6振り、重要文化財は33振りも存在しています。このように、長光の作品はその技術の高さと美しさから高く評価されているのです。

名前の由来とその歴史

「熊野三所権現長光」という名前は、刀の茎に「熊野三所権現 長光」という銘が刻まれていることから外来しています。この刀が作られた背景には、元寇の際に朝廷が行った護摩焚きに使用されるために製作されたとされています。後にこの刀は熊野大社に奉納され、その後九鬼氏に引き継がれました。九鬼氏は織田信長と関わりがあり、信長の家臣に取り立てられる際にこの刀を献上したと伝えられています。

関ヶ原の戦い以降の変遷

関ヶ原の戦いの後、上杉家が徳川将軍家にこの刀を献上することになります。上杉家は戦の結果、改易される危機に直面し、直江兼続が将軍家との交渉の際に、豊臣家から譲り受けたこの刀を献上したとされます。その後、この刀は徳川家に伝わり、1717年には朽木家に下賜されました。この際には由緒ある記録も残っており、刀の状態についての詳細が記されています。

明治以降の行方

明治時代に朽木家を離れたこの刀は、細川利文子爵の手に渡り、1931年には国宝に指定されました。戦後は個人に売却され、一時的に所有者が変わりますが、最終的には株式会社ブレストシーブが所蔵しています。現在もこの刀は、大阪府茨木市にある日本刀剣博物技術研究財団の協力を得て保存されています。

作風と特徴

熊野三所権現長光の刀身は、刃長75.0センチメートルで、鎬造りのデザインを持っています。切先は小切先で、反りは2.9センチメートルです。刀の鍛えは小板目が特徴で、刀身には美しい乱れ映りが見られます。このような高い技術と美しさが、この刀をさらに魅力的にしています。

刀剣春秋編集部の『日本刀を嗜む』などの文献によると、長光の作品は製作時代ごとに変化が見られ、その作風は多様です。刀剣はその時代背景や使われた場面によっても影響を受けていますが、熊野三所権現長光はその一例として、歴史を象徴する貴重な文化財であると言えるでしょう。

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