燃燈仏

燃燈仏：釈迦如来の成仏を予言した仏

燃燈仏（ねんとうぶつ）は、仏教において釈迦如来が成仏する以前の過去世での姿を予言した仏として信仰されています。その名は、サンスクリット語のディーパンカラ（Dipankara）に由来し、漢訳では定光仏、錠光仏などとも呼ばれます。燃燈仏は、肩に炎を持つ独特の容姿で描かれることが多いのが特徴です。

釈迦如来と燃燈仏の出会い

多くの経典、例えば『瑞応経』によると、釈迦如来は過去世において儒童梵士（じゅどうぼんし）という菩薩として修行していました。ある時、鉢摩（はつま）の国を訪れた際に、人々が道普請に勤しんでいる様子を目にします。その理由を尋ねたところ、間もなく燃燈仏が来臨するという知らせを聞き、釈迦は進んで道普請の手伝いを行いました。

しかし、道が完成する前に燃燈仏が弟子たちと共に到着します。この時、釈迦は花を供える女性から五華（ごげ）を受け取ると、それを燃燈仏の頭上に丁寧に散華しました。さらに、自らの鹿皮の衣を脱ぎ捨て、ぬかるんだ道を覆い、それでも足りない分には自らの髪をほどいて敷き詰めました。そして、燃燈仏と弟子たちが容易に通り過ぎるよう、自ら地面に伏して「仏よ、どうぞ弟子たちと共に私の背中を踏んでお通りください」と申し出たのです。

これは、衆生済度を誓う釈迦の深い慈悲の心を示す逸話です。この行動は、ただ道普請を手伝うという枠を超え、すべての衆生を救済したいという、釈迦の揺るぎない誓願の現れだったと言えるでしょう。

未来の成仏の予言

燃燈仏は、釈迦のこの並々ならぬ行為に感銘を受けます。そして、その場で釈迦に未来において成仏し、能仁如来（のうにんにょらい、釈迦如来の別名）となることを予言しました。この予言は、釈迦の修行の軌跡と、最終的に仏となることを示唆する重要な出来事です。燃燈仏の予言は、釈迦の成仏への道を照らす灯台のような存在であり、仏教における重要な出来事の一つとなっています。

燃燈仏の象徴性

燃燈仏は、その名のとおり「灯火を輝かす者」という意味を持ちます。釈迦如来の成仏という未来の光を予言した存在として、仏教徒にとって希望と救済の象徴と言えるでしょう。その肩に輝く炎は、智慧と慈悲の光を象徴し、衆生を導く仏の役割を視覚的に表現しています。

まとめ

燃燈仏は、釈迦如来の過去世における出来事を通して、仏教における重要な役割を担っています。その慈悲深い行動と、未来の成仏を予言されたという事実は、仏教の教えの根幹をなす重要な要素です。燃燈仏の物語は、釈迦如来の生涯だけでなく、仏教の教えの深遠さと、仏の慈悲の大きさを改めて私たちに教えてくれます。釈迦の成仏への道のりを理解する上で、燃燈仏の存在は欠かせません。

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